2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17590589
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
田中 宜幸 産業医科大学, 医学部, 教授 (60126597)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北 敏郎 産業医科大学, 医学部, 助教授 (00131912)
田中 敏子 産業医科大学, 医学部, 講師 (80141745)
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Keywords | p38MAPK / 炎症性サイトカイン / TNF-α / IL-1β / 好中球 / 心臓 |
Research Abstract |
麻酔下のラットの総頚動脈にカテーテルを挿入して,20分間で全血液量の25%を出血させる出血性ショックモデルを作製した。出血1,3,5時間後の心臓を採取し,炎症性サイトカインの産生を促すことで知られている細胞内シグナルの一つであるp38MAPK,炎症早期から上昇するサイトカインであるTNF-αおよびIL-1βの発現を観察した。また,各時間において血清生化学的検査結果ならびに不整脈の出現,心拍数や動脈圧の変化などを心電図や動脈圧をもとに心臓傷害を解析した。さらに,p38MAPKの活性化を阻害するFR167653を投与し,同様の検討を行い,出血性ショック後の心臓におけるp38MAPK活性とそれに続く炎症反応の発現や臓器障害の関係について検討を行った。 FR167653非投与群の平均血圧は,出血前101±4mmHgから出血後39±3mmHgへと低下したが徐々に昇圧し,出血1時間後では出血前に回復したが,その後は継続的に低下した。心拍数も同様の経過をたどった。また,心電図上3時間後から心室性不整脈が出現し,その頻度は経時的に増加した。心臓組織中のp38MAPK活性は1時間後で最も上昇,TNF-αmRNAは1時間後で,IL-1βmRNAレベルは3時間後に最も強く上昇し,心臓血中の同サイトカインレベルも同様の経過をたどった。また,5時間後には血管腔内に炎症細胞の集簇,心筋の好酸性化および間質の浮腫が認められ,さらに血清生化学的に心筋傷害を認めた。しかしFR167653投与群には,上記の変化は認められなかった。 このことから,出血による心臓中の血流減少というストレスが心組織内でp38MAPKを活性化し,炎症性サイトカインの発現を促して好中球などの炎症性細胞のプライミングを引き起こし,最終的には炎症反応を介した心臓傷害が発生して,不整脈の出現など機能的な障害が生じた可能性が示唆された。
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