2005 Fiscal Year Annual Research Report
老人性痴呆に伴う心理・行動学的症状に対する和漢薬治療の検証
Project/Area Number |
17590592
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岩崎 鋼 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (90396432)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒井 啓行 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (30261613)
|
Keywords | 認知症 / 心理行動学的症状 / 漢方薬 / 抑肝散 / 日常生活動作 / 副作用 |
Research Abstract |
老人性痴呆症では認知機能の低下と共に、心理行動学的症状(いわゆる問題行動、BPSD)が介護上重大な障害となり、施設入所の最大の要因となる。向精神薬はBPSDに有効であるが同時にADL低下、錐体外路症状、転倒、誤嚥などの副作用があり、それに替わる治療法が強く求められている。抑肝散はBPSDに対し有効であるとの症例報告が散見される。 方法:52名のBPSDを有する老人性痴呆症患者をランダムに2群に分け、一群(抑肝散群27名)には抑肝散(TJ54)7.5g/日を4週間内服させ、他(対照群25名)は通常治療を継続した。期間の前後で両群のBPSD(NPI)、認知機能(MMSE)、ADL(Barthel index)をそれぞれ盲検化された観察者によって計測し、群間比較を行った。また錐体外路症状その他の有害事象の有無を記録した。投与1週間でBPSDについてコントロール不十分な時、塩酸tiapride75mg1錠を追加投与した。 結果:抑肝散群ではBPSDスケールであるNPIが37.9±16.1から19.5±15.6まで有意に低下し,一方コントロール群では有意な変化を認めなかった。MMSEは両群とも有意な変化は認めなかった。ADLの指標であるBarthel Indexは抑肝散群で56.4±34.2から62.9±35.2と有意に改善し、対照群では変化がなかった。抑肝散群において有害事象は認めなかった。対照群ではコントロール不良のため11名が塩酸tiaprideの追加投与を要し、そのうち6名がふらつきを訴えた。 抑肝散は痴呆症のBPSDに有効で、かつ向精神薬で問題となる錐体外路症状、転倒、誤嚥などの有害事象を生じなかった。服用後のADLがむしろ有意な改善を示し、また認知機能もMMSEレベルでは影響を受けなかった。
|
Research Products
(2 results)