2005 Fiscal Year Annual Research Report
ストレス負荷による遺伝子発現異常の解析(ストレス障害における漢方薬の役割)
Project/Area Number |
17590602
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
石毛 敦 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (20383705)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
入江 祥史 慶應義塾大学, 医学部, 非常勤講師 (00344606)
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Keywords | ストレス / グルココルチコイド / デキサメサゾン / 乳児期母子分離 / マウス / 遺伝子発現 / PCR / 漢方薬 |
Research Abstract |
拘束水浸ストレスを長期間負荷することにより、デキサメサゾン抑制試験で非抑制が認められ、海馬あるいは前頭葉皮質のグルココルチコイドレセプター(GR)の障害が見られることを報告してきた。 本研究は、拘束水浸ストレス以外のGR障害が見られるモデル系を確立し、さらにはそのGRの異常を分子生物学的に詳細に検討することを目的としている。 本年度は、ストレスモデル作成に主眼をおいた。すなわち、マウスを用い出生当日より1日2時間あるいは4時間の母子分離ストレスを毎日1週間に渡って負荷した。その後10〜13週の間に行動学的試験(高架式十時迷路)、デキサメサゾン抑制試験(DST)およびGRの発現量をReal time RT-PCR法により検討した。 その結果、DSTでは正常な抑制がかかるにもかかわらず海馬でのみGR異常が認められ、行動学的には強い不安を呈することが確認された。乳児期母子分離ストレスによる慢性ストレスモデルを確立した。 乳児期母子分離ストレスモデルにおいて幼児期ではDSTでの非抑制や海馬あるいは前頭葉皮質でのGR発現の変動が示されている。しかし、本研究の結果では10週令以上の成獣では少なくともDSTにおける異常は認められなかった。この結果は、乳児期のストレス負荷によってもたらされる変化は幼児期と成熟期とで分けて議論する必要性を強く示唆するものである。成長するに従い、乳児ストレスによるDSTの非抑制あるいは前頭葉皮質でのGR発現増加は一見正常に戻ったように見える。しかし、行動学的には強い不安をきたし、海馬での有意なGR発現増加が確認され、乳児期母子分離ストレスが長期的な影響をもたらすことを明らかにすることができた。 今後はGRの発現量とDSTの結果、行動についてのより詳細な関連性を検討するための実験を進めていく予定である.具体的には、海馬で発現しているGRのtypeについての検討、各個体レベルでのGR発現量とDSTとの関連や行動との関連を詳細に検討する予定である。さらに、乳児期母子分離ストレスによる性差の違いなどにも注目していく予定である。治療の手段としての漢方薬の検討も行なっていく。
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