2006 Fiscal Year Annual Research Report
ストレス負荷による遺伝子発現異常の解析(ストレス障害における漢方薬の役割)
Project/Area Number |
17590602
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Research Institution | KEIO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
石毛 敦 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (20383705)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
入江 祥史 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (00344606)
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Keywords | ストレス / グルココルチコイド / デキサメサゾン / 乳児期母子分離ストレス / マウス / 遺伝子発現 / PCR / 漢方薬 |
Research Abstract |
毎日一定時間母から分離(母子分離ストレス:MS)されて育った仔は、成長後に行動異常を示すことが昨年度までの検討で明らかになったが、その結果は不安定であった。これは、MSが弱いストレスであり、しかも母のストレス感受性に個体差が大きく、ストレスが一定に負荷されていないためと考えられた。そこで、より強くて安定したストレスである「拘束ストレス(S)」を母に負荷することにし、母が受けるストレスが仔に与える影響をさらに深く検討した。 MSとSを負荷された母に育てられた仔(MS+S群)は、他の群(対照群、MS群)よりも体重が軽かった。これより、母が受けたストレスが仔の発育不全を引き起こすことが示唆された。また、発育不全マウスの行動を観察すると、離乳期以降の運動量が他の群よりも多く、多動であることが明らかとなった。しかし、不安の程度を高架式十字迷路試験で検討したところ他の群との差を認めなかったので、多動は不安と関連しないと思われた。 一般に、仔の発育不全の一因として母乳の栄養価の低下がある。母乳成分は血清成分を強く反映するため、本研究では母の血清アルブミンと総蛋白を測定したところ、どちらもMs+S群では対照群と比べ高く、仔の発育不全が母乳栄養価の低下に起因する可能性はほぼ棄却された。 MS+Sを負荷された母には、ストレス負荷期間中および解除後1週間の時点で、他群には認められないうつ症状と不安行動が認められたことから、母が「精神不安定」になり、「育児」に何らかの支障を来たしたものと考えられる。 現在、これらの成長および行動異常を遺伝子レベルで捉えるため、各マウスの脳における遺伝子発現の解析を行っているところである。 (結論) 子育て中の母マウスの過度なストレスは、仔マウスに影響し、行動学的な異常はその仔が成長しても残ることが示唆された。
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