2007 Fiscal Year Annual Research Report
パニック障害の治療戦略:本邦実生活対応型バーチャルリアリティーソフトウェアの開発
Project/Area Number |
17590604
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
吉田 菜穂子 Waseda University, 付置研究所, 准教授 (10398919)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野村 忍 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (00198623)
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Keywords | パニック障害 / バーチャルリアリティー / エクスポージャー / 認知行動療法 |
Research Abstract |
【背景】パニック障害の治療法としてエクスポージャーを中心とした認知行動療法がある。これは、回避場面(交通機関や人ごみ等)に直面しながら発作や不安の制御を学ぶ方法であるが、外出での治療のため、機会も限られている。 【目的】バーチャルリアリティ(以下VR)ソフトウェア<回避対象として頻度の高い地下鉄環境のソフトウェア>を開発し、地下鉄を回避するパニック障害患者を対象に、診療室内でのVRエクスポージャーを中心とした認知行動療法(全6回)を行ない、質問紙(パニック障害重症度スケール、回避行動検査等)・日常生活下の症状の点から治療効果を評価することを目的とした。 【結果】既に7名に対しVRエクスポージャーを中心とした認知行動療法を終了した。パニック障害重症度スケールについては全例で症状の改善が得られており、発作が残った患者はおらず、いずれも通常の日常生活への支障はない状態となった。しかし、飛行機や船等あらゆる場面への回避行動を評価する回避行動検査や日常生活下の不安・身体症状の治療による変化についてば、改善がみられた患者がいる一方、変化のない患者がいるなど、患者間でのばらつきがみられた。また、発症直後で薬物服用のない患者において不安の強い曝露場面における心拍数の増加や交感神経活動の増加も示され、適切な対処を繰り返すことでこれらの増加が認められなくなったが、これより本ソフトウェアの現実感の高さやエクスポージャーによる「慣れ」の効果が客観的に示されたといえる。 【結論】VRソフトウェアはパニック障害の改善に有効であり、診療室内での認知行動療法や、不安場面や回避場面への対処法の確認に用いることが可能である。なお、治療後には、各患者の残存症状を評価し、完治のない場合には治療を続行することが望ましい。
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