2006 Fiscal Year Annual Research Report
肝炎ウイルス特異的T細胞に対する免疫制御機構に関する研究
Project/Area Number |
17590620
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
垣見 和宏 東京大学, 医学部附属病院, 客員助教授 (80273358)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
倉知 慎 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (00396722)
松島 鋼治 東京大学, 大学院医学系研究科, 教授 (50222427)
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Keywords | HBV / CTL / メモリーT細胞 / ワクチン / 抑制生T細胞 |
Research Abstract |
我々は本研究のテーマである肝炎ウイルスに対する生体のダイナミックな免疫応答を解析する過程において、肝炎ウイルスに限らず、免疫の本質の一つである免疫学的メモリー(immunological memory)に関する重要な知見を明らかにすることができた。ウイルス感染を制御した個体では、ウイルス特異的CD8+T細胞がメモリー細胞に分化して、一生涯生体を守っている。これまで、メモリー細胞はあたかもstem cellのように自己増殖を繰り返す、不老不死・長命の細胞と考えられていたが、我々は「抗原特異的CTLは感染刺激の都度大きく交代する」ことを証明した。 CD8陽性T細胞はウイルスに感染した細胞を排除するのに重要な役割を果たす獲得免疫細胞のひとつで、体内にナイーブな状態で一定数存在するが、ウイルスに感染するとエフェクターCTLとして増殖したのち減少してメモリーCTLとなり、次に同一のウイルスにより感染を受けた場合にすばやく応答して感染状態の悪化を防いでいる。我々は、二度目の感染(二次感染)時に、体内に存在しているナイーブ細胞からもごく少量ながらメモリーCTLが誘導されることに着目し、一次メモリーCTLと二次メモリーCTLがどのような役割を果たしているかを検証した。一次メモリーCTLと二次メモリーCTLが共存しているマウスから取り出した細胞を別のマウスに移入し、三次感染刺激を与えて各メモリーCTLの分裂応答能やTCRレパトア推移をみた。その結果、三次感染時の抗原特異的免疫応答の主体は二次感染時に誘導されたより若いCTLであることが明らかになった。 繰り返される感染において、一旦樹立されたメモリーCTL(古参兵)は減少してゆき、感染の都度誘導されてくるメモリーCTL(新兵)が量的にも質的にも感染防御に力強く働いている様を明らかにすることができた。
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