2006 Fiscal Year Annual Research Report
C型肝炎ウイルス複製複合体の細胞内局在によるインターフェロン耐性機構の解明
Project/Area Number |
17590627
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
前川 伸哉 山梨大学, 大学院医学工学総合研究部, 講師 (70397298)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榎本 信幸 山梨大学, 大学院医学工学総合研究部, 教授 (20251530)
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Keywords | HCV / NS5A蛋白 / インターフェロン耐性 / HCVレプリコン |
Research Abstract |
●本研究の目的は、C型肝炎ウイルス(HCV)の細胞内における増殖局在部位を明らかとし、さらに同局在部位における増殖制御のメカニズム解明を通して、最終的にHCVに対するインターフェロンを含めた効果的な治療法の確立を目指すことにある。我々は細胞内小器官におけるオルガネラ膜脂質構造の重要性に着目した。すなわち、小胞体、あるいはゴルジ体の脂質二重層に形成される"脂質ラフト"と呼ばれる機能ドメイン構造に、ウイルス蛋白と宿主因子からなる複製複合体が形成されることが、一部のプラス鎖RNAウイルスにおいて報告されている。しかしながら、脂質ラフトがHCVの複製複合体形成、増殖に対して、どのような役割を持つのか全く明らかとはされていない。我々は、脂質ラフト構成成分であるスフィンゴミエリン、コレステロール、飽和脂肪酸、各々の合成阻害剤による、HCVの増殖制御についてHCV培養細胞増殖系であるHCVレプリコンシステムを用いて検討を行った。 まず、スフィンゴミエリン合成経路阻害剤であるミリオシン培地添加を行ったところ、HCVレプリコン増殖は濃度依存性に抑制され、その効果は経時的に増強した。一方、スフィンゴミエリンの直接基質であるフィトスフィンゴシンを培地に添加しておくことにより、ミリオシンで抑制されたレプリコン活1生は濃度依存性に回復し、HCV増殖抑制はスフィンゴミエリン合成経路特異的であることが明らかとなり、HCV増殖におけるスフィンゴミエリンの重要性が示された。次に、コレステロール合成経路Mevalonate pathwayに注目し、同経路阻害剤であるシンバスタチンを培地に添加した。すると生理的血中濃度に相当する範囲でのシンバスタチン投与によって、HCVレプリコン増殖は濃度依存性に抑制された。我々はさらに近年、Mevalonate pathwayの強力な阻害活1生を持つことが明らかにされたビスフオスフォネートについても検討を行い、Risedronate、Alendronat、Zoledronic acidが、スタチンを遙かに凌ぐ著明な抗HCV効果を持つこと(selectivity index 300~400)を示した。以上の結果は複製複合体形成における脂質ラフトの重要性を示唆すると共に、脂質ラフトがHCV増殖制御における重要なターゲットであることを示している。今後さらにHCV複製体における脂質ラフトの関与、これら薬剤の抗ウイルス機序についてさらに詳細な検討を行ってゆく。一方、申請当初記載した、複製複合体形成におけるNS5A蛋白変異の関与の検討は未だ途上であるものの、宿主FBL2蛋白を介してNS5A蛋白が脂質ラフト内の複製複合体に結合することが報告され(Molecular Cell,2005)、FBL2結合におけるNS5A変異の解析を行いつつある。
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