2005 Fiscal Year Annual Research Report
抗酸化作用を持つプロバイオティクスを用いた炎症性腸疾患治療法の開発
Project/Area Number |
17590634
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西尾 彰功 京都大学, 医学研究科, 助教授 (50362463)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 肇 京都大学, 医学研究科, 助教授 (70303914)
淀井 淳司 京都大学, ウイルス研究所, 教授 (80108993)
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Keywords | チオレドキシン / 炎症性腸疾患 |
Research Abstract |
1.チオレドキシン(TRX-1) がヘリコバクター胃炎に及ぼす効果を検討した。ヘリコバクター・フェリス菌を感染させた野生型マウスでは、炎症細胞浸潤を伴う固有胃腺の破壊と胃壁肥厚がみられたのに対し、TRX-1トランスジェニック(TRX-Tg)マウスでは胃炎が抑制された。その機序としてTRX-1による炎症細胞の遊走抑制と胃粘膜の酸化ストレス抑制によることを明らかにした。 2.急性膵炎におけるTRX-1の役割について検討した。急性膵炎患者では血清TRX-1濃度の上昇がみられ、疾患の重症度と相関することを明らかにした。セルレイン/LPS誘発急性膵炎モデルの検討では、野生型マウスは壊死・出血を伴う急性膵炎により高率に死亡したが、TRX-Tgマウスでは膵炎の軽減と死亡率の著明な低下を認めた。TRX-1による膵酸化ストレスの軽減と転写因子NF-kβ抑制による炎症性サイトカイン産生抑制によることを明らかにした。リコンビナントTRX-1投与でも急性膵炎抑制効果がみられ、急性膵炎に対する有望な治療法となりうることを示した。 3.炎症性腸疾患におけるTRX-1の役割について検討した。潰瘍性大腸炎およびクローン病患者では、健常者に比較し血清TRX-1濃度の上昇がみられた。潰瘍性大腸炎患者では疾患活動性指標と強い相関がみられ、クローン病では中等度の相関が見られた。 4.デキストラン硫酸誘発大腸炎モデルを用いてTRX-1の効果を検討した。野生型マウスでは下痢・血便・体重減少を伴う大腸炎がみられたのに対し、TRX-TgマウスおよびリコンビナントTRX-1投与マウスでは症状の軽減と大腸炎の軽減がみられた。リコンビナントTRX-1が腹腔内投与後、経時的に大腸粘膜に移行することを証明した。大腸炎抑制機序としてTRX-1によるマクロファージ遊走阻止因子(MIF) 抑制によることを明らかにした。
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