Research Abstract |
研究はヒトBarrett食道の内視鏡生検材料による臨床的検討から行った。Barrett粘膜のムチン形質,COX-2の発現,PCNAによる細胞増殖およびssDNAによるapoptosisの程度を免疫組織化学的検討により検討することで,発癌リスクの高いBarrett食道を同定するのに成功し,さらにこれらをcrystal violetを用いたpit patternの判定から内視鏡的に選定する診断法も確立し,これらの成果を論文発表した。また,Barrett食道におけるReg geneの発現を世界に先駆けはじめて証明し,その臨床的意義を検討した。Reg geneの発現はBarrett食道の消褪の主要因である再扁平上皮化と関連することが見出され,このことはBarrett食道消褪治療への応用の可能性を示唆するものであり,研究内容を論文として報告した。さらに,胃の腸上皮化生に発現し,胃癌発癌に関与すると報告のあるFatty acid synthase(FAS)にも着目し,同様に腸上皮化生が本態であるBarrett食道での発現を検討したところ,腸型ムチン形質で,細胞増殖能の亢進したBarrett粘膜との関連が見出され,この内容を学会にて報告した。FASは癌の増殖・転移に関与するerbB-2遺伝子と密接に関連し,hypoxia inducible factor(HIF)-1αを介したVEGFの発現を規定する因子として注目されている。従って,当初の研究計画にあったBarrett食道におけるHIF発現の検討に整合性を持たせる結果となった。HIF発現の検討では,Barrett食道における血管新生に的を絞り解析した。その結果,血管新生もまた発癌及び癌の伸展に深く関与する可能性が判明した。 以上より,動物発癌実験におけるReg及びVEGFの検討は,Barrett食道の消褪あるいはBarrett腺癌の抑制治療を目指す上で,極めて臨床的意義の深い研究となる。その発癌実験は,既存のReg transgenic及びKnockout mouseを利用するために,mouseでのモデルの作成に努めているが,control群で未だ安定したBarrett腺癌発生を得るに至っていない。現在,外科医の協力の下,発癌モデル作製手技を取得中である。
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