2005 Fiscal Year Annual Research Report
本邦におけるB型肝炎ゲノタイプDの拡散速度と拡散防止に関する分子疫学的研究
Project/Area Number |
17590653
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
道堯 浩二郎 愛媛大学, 医学部附属病院, 助教授 (50209798)
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Keywords | B型肝炎ウイルス / ゲノタイプ / Gianotti病 / 感染拡散 / 分子疫学 |
Research Abstract |
四国北西部には本邦では稀なB型肝炎ウイルスゲノタイプD(HBV/D)が侵淫している。一方同地域では1970年台にHBs抗原サブタイプaywのHBVによるGianotti病が流行し、そのゲノタイプはDであることが推定されている。HBV/Dの同地域への侵入時期と拡散時期ならびにその由来を明らかにすることを目的として、検討した。 【方法】四国北西部在住のHBV感染者363例(男213例、女150例、13-86歳)を対象にHBVゲノタイプを測定し、出生年齢を検討した。更に、HBV/D感染例19例(男11例、女8例、13-86歳)より採取された血清20検体(2検体は同一人より19年の間隔で採取)からDNAを採取し、HBV20株の全塩基配列を決定した。データベースに登録された世界各地のHBV/D配列を含めて分子系統樹を作成するとともに、分子進化学的手法を用いて変異速度および同地域への侵入時期・拡散時期を推定した。 【結果】同地域のゲノタイプ別頻度はA-Dの順に1.7%、6.6%、77.4%、14.3%であった。出生年は、HBV/Dで1970台に集中していたが、他のゲノタイプでは偏りはなかった。塩基配列は、19株が3182塩基、1株が3194塩基で、サブタイプはすべてayw3であった。分子系統樹では、20株はclusterを形成し、データベースに登録されたHBV株の中では、ロシアと北ヨーロッパからのHBVに類縁株がみられた。変異速度は5.4×10^<-5>/塩基/年と算出され、clusterを形成した系統樹の起点は約100年前と計算された。また、人口統計学的モデルでの解析により、拡散開始は1940年台、急速な拡散は1970年台と算定された。系統樹の起点が約100年前であること、ロシア、北ヨーロッパ株に類似した配列であることと、当地域の歴史を重ねて考察すると、日露戦争に関連した人の移動がHBV/D侵入の要因と推定された。またGianotti病が流行した1970年台は、HBV/Dが急速に拡散したと算定された時期と一致していた。 【結語】北四国のHBV/Dは約100年前に侵入し、1970年台に急速に拡散したこと、その由来はロシアからであることが推察された。
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