2006 Fiscal Year Annual Research Report
本邦におけるB型肝炎ゲノタイプDの拡散速度と拡散防止に関する分子疫学的研究
Project/Area Number |
17590653
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
道堯 浩二郎 愛媛大学, 医学部附属病院, 助教授 (50209798)
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Keywords | B型肝炎ウイルス / ゲノタイプ / 感染経路 / 日露戦争 / 分子疫学 / 分子系統樹 / 感染防止 |
Research Abstract |
本研究では、外来性のB型肝炎ウイルス(HBV)であるゲノタイプD(HBV/D)の四国北西部への侵入時期と拡散時期、その由来を平成17年度の研究で明らかにしたことに続き、平成18年度は、感染経路ならびに愛媛県内の地理的に現在どこまで拡散しているかを明らかにし、拡散防止対策の基礎データを得ることができた。HBV持続感染者509例、初感染B型急性肝炎44例を対象にHBVゲノタイプを測定した。同地域のゲノタイプ別頻度はA-Dの順に1.7%、6.6%、77.4%、14.3%であった。持続感染者に占めるHBV/Dの割合は、愛媛中予で10.9%、東予で0.8%、南予で0.8%であった。HBV/Dはほとんど中予在住者であったが、東予、南予にも1名ずつみられた。しかし、東予、南予の計2名は幼少時に中予に在住しており、中予で感染をうけたことが推察された。分子系統樹では、東予の株も中予の株と類似し、同じ由来のHBVと判断された。急性肝炎においてはHBV/Dは全B型急性肝炎の21.7%(10例)を占めた。10例中1例は劇症肝炎、1例は慢性化した。HBV/Dの急性肝炎は全例中予在住の患者であった。感染経路はgenotypeにかかわらず、性感染が大半を占めた。以上より、前年度の成績と併せ、北四国のHBV/Dは約100年前に侵入し、1970年台に急速に拡散したこと、その由来はロシアからであること、HBV/D感染の拡散は、愛媛県中部が主体で、現在のところ他地区では低頻度であることが判明した。急性感染例では、劇症化例、慢性化例を各10%に認め、日本由来のHBV(genotype BとC)とは異なる臨床像を示す頻度が高い可能性が示された。感染経路は性感染が主体であり、性感染を防止する対策が必要と判断された。
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