2006 Fiscal Year Annual Research Report
NASH(非アルコール性脂肪肝炎)の病態解明と治療法の確立
Project/Area Number |
17590658
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Research Institution | Kyushu Medical Center, National Hospital Organization |
Principal Investigator |
中牟田 誠 独立行政法人国立病院機構(九州医療センター臨床研究部), 消化器科, 医長 (00294918)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠城寺 宗近 九州大学, 大学病院, 助手 (20253411)
古藤 和浩 九州大学, 大学病院, 助手 (80289579)
井口 登與志 九州大学, 大学病院, 講師 (00294926)
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Keywords | NASH / NAFLD / 脂肪肝 / 脂肪酸代謝 / 酸化 / 活性酸素 / インスリン / AMPK |
Research Abstract |
【目的】現在NAFLDが臨床上注目され、モデル動物などでの病態解明が進められているが、実際のヒトでの病態に関しては不明な点が多い。そこでNAFLD症例における脂肪酸代謝をその関連遺伝子の発現を検討することにより病態の解明を試みた。 【方法】NAFLD26症例(うちNASH4症例)および健常者10症例の肝生検材料よりRNAを抽出し、リアルタイムRT-PCR法により脂肪酸代謝関連遺伝子の発現を比較検討した。 【結果】脂肪酸代謝は(1)脂肪酸合成・取り込み系、(2)脂肪酸酸化系、(3)ROS消去系、(4)中性脂肪合成系の部分に分かれるが、おのおのにつき関連する代表的遺伝子の発現を検討した。 (1)脂肪酸合成系:de novo合成系であるACC1とFASの発現は増強していた。また取り込みに関与するADRPの発現も亢進していた。脂肪酸合成は転写因子SREBP1cにより正に制御されているが、その発現は亢進していた。さらにSREBP1はAMPKにより負へ、インスリンシグナルにより正へと制御されているが、AMPKの発現は低下しており、インスリンシグナル系のひとつであるIRS2の発現も低下していた。(2)脂肪酸酸化系:ミトコンドリアにおいてはCPT1aの発現は低下しており、脂肪酸のミトコンドリア内への輸送が低下していることが示唆されたが、一方LCAD、HADHαやUCP2の発現は亢進しており、ミトコンドリアでのβ酸化は低下もしくは飽和しているものと考えられた。ペロキシゾームやミクロゾームではACOX、BOX、CYP2E1、CYP4A11はいずれも亢進しており、β酸化とω酸化が亢進していた。(3)ROS消去系:SODおよびカタラーゼの発現は亢進していた。(4)中性脂肪合成系:DGAT1は亢進しHSLは低下しており、中性脂肪の合成が促進していた。脂肪酸代謝全般に関与する転写制御因子であるPPARαおよびPPARγは各々低下と増加を示した。検討したすべての遺伝子の発現パターンはNAFLDとNASHにおいて相違はなかった。 【考察】NAFLDにおいては脂肪酸の蓄積にもかかわらず、更なる脂肪酸の合成と取り込みが行われていた。蓄積した脂肪酸は中性脂肪(脂肪滴)として貯蔵されるとともに、酸化による分解も亢進していた。ミトコンドリアでの酸化は低下または飽和しており、代償的にペロキシゾームやミクロゾームでの酸化が亢進していた。これら亢進した酸化により生じたROSに対してその消去系が誘導されていた。
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Research Products
(3 results)