2006 Fiscal Year Annual Research Report
凍結血清、ゲノム遺伝子を用いた萎縮性胃炎および胃癌に関する症例対照研究
Project/Area Number |
17590695
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Research Institution | National Institute of Public Health |
Principal Investigator |
鈴木 元 国立保健医療科学院, 生活環境部, 部長 (00179201)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 佐枝子 (財)放射線影響研究所, 臨床研究部, 部長 (70359454)
HARRY Cullings (財)放射線影響研究所, 統計学部, 研究員 (90443598)
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Keywords | 胃癌 / 症例対象研究 / ピロリ菌 / CagA / 線量 / 喫煙 / 萎縮性胃炎 |
Research Abstract |
目的:第1に、交絡因子を調整した胃癌に対する原爆影響を調べる。第2に、新たなバイオマーカーによる高リスクグループの同定法を開発する。 方法:放影研の原爆被爆者集団からなる成人健康調査コホート2万人の中で、保存血清がある一次非噴門部胃癌322症例と、被爆都市、性・診断時年齢・血清保存時期(診断前平均2.3年)・保存方法を合致させ、被曝線量に関してはカウンター・マッチングをし、症例に対して3倍数の対照者を用いたコホート内症例対照研究を実施した。172症例および1071対照者に関しては、診断前平均8.6年前の保存血清も使用した。保存血清を用いてH.pylori IgG抗体価、CagA IgG抗体価および萎縮性胃炎のマーカーとしてPG IとPG II、血清ガストリンを測定した。症例と対照者の被曝線量は、DS02により推計した。全対象者より喫煙情報を入手した。1163症例と対照に関しては保存血球よりゲノムDNAを抽出し、LTA252G/A多型、IL1B-31C/T多型をFRET-PCR法で検討した。 結果:本研究によって、喫煙、被曝線量、慢性萎縮性胃炎を調整後、H.pylori IgG陽性CagA低抗体価が最も強い非噴門部癌(RR=3.9, p<0.001)、特に腸型胃癌(RR=9.9, p<0.001)のリスク要因であることが判明した。慢性萎縮性胃炎(RR=2.4, p<0.001)、現在喫煙(RR=2.3, p<0.001)、線量(RR=2.1, p=0.002)も又有意なリスク要因であった。現在喫煙は、腸型より有意にびまん型胃癌にリスクが高かった(p=0.0372)。被ばくは、びまん型胃癌に有意なリスクを示したが、腸型には有意でなかった。最後に、被ばくの胃癌リスクは、非喫煙者にのみ存在し、喫煙者にはなかった。遺伝子多型の結果は、論文未発表のためここでは述べない。 考察:診断前8.6年と2.3年の比較より、CagA低抗体価のヒトはCagA高抗体価のヒトと萎縮性胃炎の進行スピードに差はなく、CagA抵抗体価は、粘膜萎縮の結果ではなく、むしろCagA陽性ピロリ菌感染に対する何らかの遺伝的応答性の差異を反映していると考えられる。今後、ゲノムの遺伝多型との関係を調べる。健診にCagA抗体価を追加すると高リスクグループの同定に役立ち、ピロリ菌除菌の対象者絞り込みに寄与できる。
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Research Products
(2 results)