2005 Fiscal Year Annual Research Report
心肥大におけるジアシルグリセロールとフォスファチジン酸を介する情報伝達機構の解明
Project/Area Number |
17590699
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
加賀谷 豊 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (90250779)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 薫 山形大学, 医学部, 教授 (30234975)
苅部 明彦 東北大学, 大学院医学系研究科, 助手 (80359504)
武田 守彦 東北大学, 病院・医員 (30375084)
|
Keywords | ジアシルグリセロールキナーゼ / フォスファチジン酸 / 心肥大 / プロテインキナーゼC / ジアシルグリセロール |
Research Abstract |
ジアシルグリセロール(DG)によって活性化されるPKCは、機械的ストレスによる心肥大の過程において極めて重要な役割を果たす酵素である。心筋におけるDGの量は、DGキナーゼ(DGK)とフォスファチジン酸フォスファターゼ(PAP)によって調節されているとされる。ラット正常心筋においてはDGKεとζの2つのアイソザイムが主として発現しており、梗塞後の心室リモデリングには、2つの酵素がそれぞれ異なった機序により関与していることを我々は報告している。一方、圧負荷肥大心において、PKC活性化に関与するDGの量の調節機構を検討した報告はなかった。 我々は、上行大動脈の縮窄により作成したラット圧負荷心肥大モデルを術後3,7,28日目に解析した。その結果、作成したモデルは、経時的に軽度の心肥大から高度の心肥大へと進行していた。さらに(1)ラット肥大心筋におけるDGK mRNAの発現量は,術後28日目にDGKεでのみ有意な発現量低下が認められた。(2)ラット肥大心筋におけるDGKζの細胞内タンパク発現量には有意な変化は認められなかった。しかし、細胞質、膜分画、膜-細胞骨格分画のDGKζタンパク発現量を解析したところ、膜分画/細胞質分画比、膜-細胞骨格分画/細胞質分画比の値が、術後28日目に有意に低下した。(3)PAPのmRNA発現量には変化を認めなかった。(4)DGKε、ζの変化が認められた術後28日目のラット肥大心筋において、心筋DG含量は、シャム手術群と比較して1.7倍と有意な産生亢進が起こっていた。さらに心肥大に関与が大きいとされるPKCα、δ,εの膜分画と細胞質分画におけるタンパク発現量を解析したところ、膜分画においてPKCδの有意な増加が認められた。以上から、高度の肥大心においては、DGKεのmRNA発現量低下によって膜におけるDGKε量が減少すること、さらにDGKζの膜から細胞質への細胞内移行により、膜におけるDGKζ量が減少することにより、膜のDG含量が増加しPKCδの活性亢進が維持されることが示唆された。
|