2006 Fiscal Year Annual Research Report
造影超音波法による周期性輝度変動量を用いた左心耳機能評価法の確立
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17590704
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
廣野 摂 山形大学, 医学部, 助手 (10332537)
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Keywords | 造影超音波法 / 左心耳 / 血流動態 / 経食道心臓超音波法 / 心原性脳塞栓 / 凝固・線溶・血小板機能 |
Research Abstract |
本研究は、心原性脳塞栓症例における左心耳機能を、左心耳内腔の血流動態(造影超音波指標と血流ドプラ指標)と左心耳壁の収縮動態(組織ドプラ)に分けて解析し、臨床レベルで解析可能な全ての凝固線溶マーカーと活性化血小板マーカーとの詳細な対比を介して、簡易で有用な左心耳機能低下指標を確立することを目的として計画された。平成16年4月以後、324例の急性脳梗塞症例が当院に緊急入院し、うち278例に対し、発症1週間以内に経食道造影心臓超音波が施行された。脳卒中カンファレンスが開催され、検査所見(CT、MRI、脳シンチグラム、超音波、脳血管撮影)の対比を介して病型診断が行なわれ、急性期・慢性期の治療方針が決定された。超音波所見と脳卒中カンファレンスで検討された結果は、データベースとしてパーソナルコンピュータに保存されており、平成18年4月以後の前向きな予後調査(113例)に利用された。 左心耳機能解析結果:超音波造影剤であるレボビスト^<TM>(1,500mg)を末梢静脈より急速注入し、左心耳全体の血流動態を解析した。血栓を認める症例やドプラ指標にて左心耳収縮能が不良と判断される症例は、内腔に造影剤が全く流入せず、左心耳内血流うっ滞の視覚評価が可能であった。アジレント・テクノロジー社製超音波診断装置SONOS 7,500に標準装備された超音波後方散乱信号指標を用いて、左心耳中央部の造影剤による輝度変動量(dB)を計測した。左心耳血栓を有する症例の輝度変動量は、血栓を認めない群に比し有意に低下していた(7.5±2.4vs.13.6±4.2dB,P<.001)。輝度変動量は、血漿フィブリンモノマー値との間に良好な相関関係を認めた(R=-.641,P=.021)。左房・左心耳機能指標(左房径、左房面積変化率、左心耳面積、左心耳駆出血流速度、左心耳壁速度、輝度変動量)を用いて多変量解析を行なった結果、輝度変動量は左心耳血栓の独立した危険因子であった(危険率5.321,95%信頼区間1.484-11.010,P=.003)。さらに輝度変動量が10dB未満の群(32例)は、10dB以上の群(81例)に比し、有意に脳塞栓の再発率が高かった(37.5%vs.8.6%,P<.001,平均観察期間354±111日)。以上より、超音波造影剤を用いた左心耳染影中の輝度変動量解析は、左心耳の機能低下と長期予後(脳塞栓の再発)を予測しうる鋭敏な指標であることが明らかになった。
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Research Products
(5 results)