2006 Fiscal Year Annual Research Report
蛋白ホスファターゼ1βを介する不全心筋内リン酸化制御異常の解明と治療応用
Project/Area Number |
17590739
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
池田 安宏 山口大学, 医学部, 助手 (00260349)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢野 雅文 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (90294628)
青木 浩樹 山口大学, 医学部, 助教授 (60322244)
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Keywords | 遺伝子 / 循環器・高血圧 / 生理学 / トランスレーショナルリサーチ / バイオテクノロジー / 筋小胞体 / アイソフォーム / 蛋白ホスファターゼ1 |
Research Abstract |
蛋白ボスファターゼ1(PP1)は心筋細胞内において、筋小胞体Ca^<2+>制御に関わる重要な脱リン酸化酵素の一つである。不全心では、細胞内PP1活性が異常に元進し、筋小胞体(SR) Ca^<2+>制御の鍵となる蛋白ホスホランバン(PLN)のSer16/Thr17を脱リン酸化してしまう。PLNの脱リン酸化は筋小胞体Ca^<2+>ATPase活性の抑制を惹起してしまうため、PP1活性亢進は、結果的に不全心での心機能悪化の要因となる。したがって、PP1は心不全の治療の標的として有望である。 PP1には3つのアイソフォームが存在し、それぞれ別々の遺伝子でコードされる。3つのアイソフォーム間の相同性は約85-90%である。いままで、三つのアイソフォームごとの心筋細胞内での生理的役割は不明であった。そこで、本研究では心筋細胞におけるPP1各アイソフォームの役割を調べた。 方法:PP1 isoform (α,β,γ)に対し特異的に発現を抑制するアデノウイルスによるshort hairpin RNAiベクターを作成し、8週齢ラットの単離成獣心筋細胞に感染した。感染48-72時間後にRNAiの効果を検討した。結果:アデノウイルス感染48時間後にはmRNAは対照群の10-25%に抑制された。72時間後には蛋白レベルでもPP1α,β,γの発現レベルが著明に減少していた。PP1α,β,γのRNAiはそれぞれ、対照ベクターに比べ強い心筋細胞収縮、Ca^<2+>トランジエントを示レたが、なかでもPP1βRNAiは最も強い収縮増強作用を示した。収縮増強のメカニズムとしてPP1βRNAiはSer-16、Thr-17部位のPLNリン酸化を著明に元進させた。考察:心筋細胞においてはPP1の3つのアイソフォームのうち、PP1βがもっともPLNの脱リン酸化に関与しており、細胞収縮・拡張性の制御を司っていると考えられた。この結果は以前の我々や他の研究グループの解析において、不全心でPP1蛋白アイソフォームのうちPP1βの発現亢進が著しく、PLNのリン酸化低下がみられるという臨床的治験ともよく一致する所見であった。今後は、不全心において亢進しているPP1β活性を是正する分子標的の同定、つまり筋小胞体におけるPP1βのアダプター蛋白の同定を行う予定である。
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Research Products
(5 results)