2006 Fiscal Year Annual Research Report
血管病変部の緊張異常と増殖性亢進におけるプロテイナーゼ活性化型受容体の役割
Project/Area Number |
17590744
|
Research Institution | KYUSHU UNIVERCITY |
Principal Investigator |
平野 勝也 九州大学, 大学院医学研究院, 助教授 (80291516)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平野 真弓 九州大学, 大学院医学研究院, 助手 (80336031)
|
Keywords | 血管病 / プラスミン / 受容体 / 血管トーヌス / 発現 / プロテイナーゼ / 血管スパズム |
Research Abstract |
血管病の発症、進展におけるプロテイナーゼ活性化型受容体(Proteinase-activated receptor : PAR)の役割を明らかにすることを目的として研究を実施した。本年度は、線溶系において中心的役割を果たすプラスミンが、ブタ冠動脈において一酸化窒素産生を介して、内皮依存性血管弛緩反応を引き起こすことを初めて明らかにした。事実、ブタ冠動脈培養内皮細胞とヒト臍帯静脈培養において、プラスミンは一過性に細胞質内カルシウムの濃度を上昇し、ブタ冠動脈培養内皮細胞において一酸化窒素産生を引き起こした。プラスミンによる弛緩反応はプロテアーゼ阻害薬、プラスミン阻害薬によって抑制されたことから、PARと同様の受容体が関与していることが示唆された。しかしながら、トロンビンあるいはトリプシンで先に刺激しても、続くプラスミン投与による弛緩反応の大部分は阻害されなかった。このことから、プラスミンによる弛緩反応において既知のPARsは重要な役割を果たしていないことが示唆された。すなわち、プラスミンの内皮細胞には、これまでに同定されていない新たなPAR様受容体の関与を提唱する。一方、プラスミンで前処置した血管条片では、トロンビンが引き起こす弛緩反応は抑制されたが、PAR-1活性化ペプチドが引き起こす弛緩反応は抑制されなかった。さらにプラスミンの前処置は、トリプシンやサブスタンスPが引き起こす弛緩反応に影響を及ぼさなかった。さらに、培養内皮細胞において、プラスミンの前処置が、その後のトロンビン投与による細胞質カルシウム濃度上昇を抑制するが、トリプシンによる細胞質カルシウム濃度上昇には影響を及ぼさないことを明らかにした。以上のことから、ブタ冠動脈において、プラスミンは内皮依存性に一酸化窒素を産生し、血管弛緩反応を引き起こすことと、一方、トロンビン受容体を特異的に不活性化することが示された。
|