2005 Fiscal Year Annual Research Report
高血圧における心血管中枢内Rac1を介した活性酸素産生の役割
Project/Area Number |
17590745
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
廣岡 良隆 九州大学, 大学病院, 講師 (90284497)
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Keywords | 血圧 / 心拍数 / 交感神経系 / 活性酸素 / 脳 / 遺伝子 / 高血圧 / 酸化ストレス |
Research Abstract |
高血圧における活性酸素の役割が示唆されているが、脳内活性酸素が交感神経系を介していかに高血圧の神経性調節機序に関与しているかは明らかではない。活性酸素の産生源として、特にNAD(P)H oxidaseを介した産生系が血管では注目されている。本研究では、そのcomponentとしてkeyとなるRac1遺伝子の発現及び活性が、高血圧モデルの脳内心血管中枢で増加しているか、活性酸素産生を生じるか、その結果交感神経活動亢進を介した血圧上昇機序に関わっているかを明らかにすることである。 本年度は、高血圧動物の心血管中枢内Rac1遺伝子発現が亢進しているか、高血圧動物の心血管中枢内Rac1遺伝子抑制によって降圧及び交感神経活動抑制が生じるか、を検討した。 高血圧モデルとして脳卒中易発症性自然発症高血圧ラット(SHRSP ; stroke-prone spontaneously hypertensive rat)、対照としてWistar-Kyoto rat(WKY)を用いて実験を行った。心血管中枢であり交感神経活動を規定する頭側延髄腹外側野(RVLM ; rostral ventrolateral medulla)にアデノウイルスをベクターとしたdominant-negative Rac1遺伝子を発現させ(AdDNRac1群)、テレメトリー法を用いて、無麻酔覚醒下で血圧・心拍数の変化を観察した。交感神経系の指標として尿中ノルエピネフリン排泄量を測定した。遺伝子にはHAをtagとして組み込んであり、Western blot法によって、遺伝子導入後7日目をピークとする発現がRVLM局所で認められた。その発現の時間経過と一致して、SHRSPにおいてのみ、降圧・心拍数の減少が認められた。また、遺伝子導入前と7日目で測定した尿中ノルエピネフリン排泄量は、SHRSPのAdDNRac1群で有意に低下した。なお、遺伝子導入前はSHRSPでWKYより尿中ノルエピネフリン排泄量は多く、このモデルにおける交感神経活動亢進が示唆された。RVLMにおけるRac1活性は、SHRSPでWKYより有意に高かった。また、活性酸素産生量もTBARS(Thiobarbituric-reactive substances)法や電子スピン共鳴法を用いて、SHRSPでWKYより有意に高いことを確認した。また、経口投与による降圧薬治療(amlodipine)によって交感神経活動抑制効果に伴って脳内活性酸素産生抑制が生じることを観察した。
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