2006 Fiscal Year Annual Research Report
チロシン脱リン酸化における血管新生療法が心筋リモデリングに与える影響
Project/Area Number |
17590746
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Research Institution | KYUSHU UNIVERCITY |
Principal Investigator |
牧野 直樹 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (60157170)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾山 純一 九州大学, 大学病院, 助手 (30359939)
前田 豊樹 九州大学, 大学病院, 講師 (30264112)
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Keywords | 血管新生 / チロシンリン酸化 / リモデリング / 遺伝子治療 / 心筋梗塞 |
Research Abstract |
下肢のラット虚血モデルにおいて、組織TNFが増加し、TNFのTyrosine Phosphataseにより、血管内皮増殖因子(VEGF)受容体のチロシンリン酸化が阻害されることを申請者らは報告した(Circulation. 2004)。また、同モデルにおいてcytoplasmic protein Tyrosine PhosphataseであるSHP-1が増加し、SHP-1に対するsmall interfering RNA(siRNA)を虚血部位に投与するとVEGF受容体の脱リン酸化は抑制され、VEGF受容体のチロシンリン酸化が活性化し血管新生が観察された。本研究において心筋梗塞ラットモデルを作成すると、梗塞域周辺部ではSHP-1が増加することを確認した。SHP-1に対するsiRNAの梗塞直後の投与でVEGF受容体の脱リン酸化は抑制され、VEGF受容体のチロシンリン酸化を活性化し、心筋梗塞サイズが縮小することを認めた(FASEB J. 2005 Dec;19(14):2054-6)。この時心筋細胞のアポトーシスの抑制と梗塞域周辺部の血管新生を認めた。以上の研究からSHP-1は心筋や血管の再構築に大きな役割を担っていることが示唆された。SHP-1は細胞分化・増殖、Angiotensin II(AII)、多くに増殖因子などの生理活性に大きく関与していることが報告されていることから、モデルラットにおいてはSHP-1抑制によるVEGF受容体のチロシンリン酸化を活性化することが心筋リモデリングに重要な因子であると思われる。またSHP-1は内皮細胞からの活性酸素産生にも関与していることが最近知られ、PI3-K依存性Rac-1活性の陰性制御によりNADPH oxidase活性に影響を与える。また、最近SHP-1は糖代謝に影響することが報告(Nat.Med.,Dubois MJ et al. 2006)されている。その中で、インスリンのシグナル伝達系はインスリン受容体リン酸化によってその作用が生じるが、SHP-1は肝臓や筋肉組織でのインスリンの感受性や糖代謝の恒常性に深く関与しているとされている。本研究では増殖因子であるVEGFを直接投与するのでなく、VEGF受容体のチロシンリン酸化を活性することにより、その増殖効果を確認できた。今後、末梢血管病、虚血性心臓病などの血管病に対して、有効な治療へと発展が期待される。
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Research Products
(5 results)