2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17590768
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
甲斐 久史 久留米大学, 医学部, 助教授 (60281531)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安川 秀雄 久留米大学, 循環器病研究所, 講師 (60289361)
工藤 博司 久留米大学, 医学部, 助手 (10373135)
高山 成政 久留米大学, 医学部, 助手 (70389253)
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Keywords | 臓器障害 / 高血圧 / 心不全 / 炎症 / 細胞・組織 |
Research Abstract |
本研究の目的は、(1)慢性高血圧モデルでの臓器障害進展における炎症機転の意義を明らかにする。(2)血圧変動や高脂血症、糖尿病といった危険因子が臓器障害を増悪させるメカニズムを明らかにすることである。 本年度は、以下の点について研究を実施した。 (1)血圧変動が高血圧性臓器障害を増悪させるメカニズムについての検討: a.自然高血圧発症ラット(SHR)に両側sino-aortic denervation(SAD)により血圧反射除神経したSHR+SADラットを作成した。このラットは、テレメトリー法を用いて24時間連続血圧モニターを行ったところ、慢性安定高血圧モデルであるSHRと比較して、平均血圧は変化しないが平均血圧の標準偏差、共変動が著明に増大していた。これは血圧の変動が増大していることを意味する。すなわち、血圧変動高血圧モデルの開発に成功した。 b.SHRにSADまたはsham手術を施行し7週間後に心臓を摘出した。血圧変動高血圧ラット(SHR+SAD群)は、血圧安定高血圧ラット(SHR群)に比して、求心性心肥大が助長されていた。組織学的検討により、血圧変動により心筋横径が増加していた。また、SHR群では線維化は心筋内血管周囲に軽度認められるのみであったが、SHR+SAD群では著明な血管周囲線維化に加え、patchyでmassiveな心筋細胞脱落部位に一致した置換性線維化を広範に認めた。 c.SHR群では心筋内血管周囲に軽度認められたマクロファージ浸潤が、SHR+SAD群では血管周囲への浸潤が著増した。リアルタイムRT-PCR法によりマクロファージに対する強力なケモカインであるMCP-1、炎症性サイトカインIL-1β・TNF-α、組織線維化因子TGF-β、アンジオテンシノーゲン遺伝子の発現を検討したところ、SHR+SAD群ではSHR群に比して、著明な発現亢進を認めた。 d.非降圧量のアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)を投与したところ、MCP-1、IL-1β、TNF-α発現増強が減弱しマクロファージ浸潤が抑制された。さらに、心筋肥大や心筋線維化の増悪が抑制された。以上から、心筋組織アンジオテンシン系活性化が血圧変動による心筋リモデリング助長に関与することが示唆された。 (2)血圧変動や高脂血症、糖尿病といった危険因子が臓器障害を増悪させるメカニズムについての検討: マルチプルリスクファクター症候群のモデル動物であるOLETFラットにSADを施行することで、血圧変動増大マルチプルリスクファクターモデルを作成中である。元来、SHRに比してOLETFラットが脆弱であることから、麻酔死、周術期死亡などの頻度が高いため、安定したモデルの作成に難渋している。手術施行時期、麻酔法、周術期管理の示適化により初期生存率は向上したが長期的に突然死がみられ、その原因を検索中である。
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Research Products
(6 results)