2006 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム情報の臨床応用-遺伝子多型情報を用いた気管支喘息重症化の予測-
Project/Area Number |
17590771
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
檜澤 伸之 北海道大学, 大学院医学研究科, 助教授 (00301896)
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Keywords | 気管支喘息 / 一塩基多型 / ムスカリン受容体遺伝子 / CRTH2遺伝子 |
Research Abstract |
喘息は慢性の炎症性肺疾患であり、吸入ステロイドによる抗炎症治療が積極的に右われるようになった現在でも、一部の患者では徐々に気道リモデリングが進行し、気道の閉塞性障害が非可逆的になる。その結果、喘息のコントロール維持のために慢性的な経ロステロイドの投与が必要となり、著しく生活のQOLが低下してしまう。本研究ではゲノム多型情報を用いて、慢性的に進行、悪化する喘息患者を同定することを目的とした。個々の遺伝因子の寄与度が大きくないことを踏まえ、検出力もっとも高いと考えられる患者対照研究を用いた。またそれぞれの候補分子が持つ生理的な機能から、生物学的に意味があると考えられた場合には遺伝子-遺伝子交互作用についても検討した。昨年度は、オステオポンティン遺伝子、IL-17F遺伝子、β2交感神経受容体(ADRB2)遺伝子が血清総IgE値、喘息、さらには気道過敏性と遺伝的に関連することを報告した。さらに喘息発症において、FCER1B遺伝子とPAI1遺伝子との交互作用を発見した。本年度はこれら一連の結果をまとめるとともに、ムスカリン受容体M1遺伝子やCRTH2遺伝子が、喘息の発症や病態に与える影響を検討した。 特に、M1受容体遺伝子のプロモーター領域に存在する2箇所の一塩基多型(SNP)は、転写活性に影響を与えること、さらに転写活性が亢進する多型を有する群で喘息発症のリスクが高いことを発見した。一方、CRTH2遺伝子の3'領域にはメッセージの安定性に影響を与える多型が報告されているが、少なくとも我々が検討した約800名(喘息患者400名、健常人400名)においては、喘息の病態への遺伝的な影響は認められなかった。これまでの一連の研究結果は、検討したそれぞれの分子の喘息病態における重要性を遺伝疫学的な手法で確認したことに加え、それらの遺伝因子が喘息の重症度に影響を与えている可能性を示した。
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