Research Abstract |
いろいろな肺傷害の最終段階として肺線維症が惹起されるが,その進展過程において肺内の線溶系活性が抑制されていることがわかっている.この病態は難治性であるが,肺内の線溶系活性を亢進させることにより,肺の線維化を制限しうることが明らかにされてきた.肺内の線溶系活性を亢進させる手段として,1)肺内へのウロキナーゼの遺伝子導入,2)線溶系抑制因子であるPlasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)の発現抑制,という2つの方策が考えられるが,本年度の研究はその準備に大きな割合を費やした.それぞれのアプローチについての成果を以下にまとめる. 1)ウロキナーゼをコードするアデノウィルスを作製,増幅し,実際に,ブレオマイシン気管内投与によって肺傷害・肺線維症を引き起こされたマウスへの投与を行ったが,アデノウィルスの炎症惹起作用が強く,残念ながら,肺線維症の改善を認めるには至らなかった.ステロイドの同時投与にても,その炎症を抑えることが出来ないことも判明した. 2)PAI-1を抑制するSiRNAを4つ作製し,それぞれのNIH3T3,RAW細胞のPAI-1産生を抑制するかを検証した.そのうちの一つが,mRNA及び蛋白レベルでPAI-1産生の抑制作用を示すことが判明した. 以上より,線溶系亢進を目指す方法は,予想された結果が得られないことがわかったが,線溶系抑制因子の抑制を目指す方法は,PAI-1を抑制するSiRNAの塩基配列が判明したことより,このSiRNAを如何に肺内に投与するか,さらに,肺線維症モデルに応用するかが今後の研究課題となる.
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