2007 Fiscal Year Annual Research Report
腎性貧血での代償性腎外エリスロポイエチン産生障害の検討とそれに基づく遺伝子治療
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17590815
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松原 光伸 Tohoku University, 大学院・医学系研究科, 准教授 (30282073)
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Keywords | 腎 / 貧血 / 生理学 / 腎不全 / エリスロポイエチン / 腎尿細管 / 肝 / 遺伝子 |
Research Abstract |
慢性腎不全では貧血(腎性貧血)の合併が問題となる。本研究では保存期(透析前)慢性腎不全における腎性貧血においてエリスロポイエチン(EPO)の遺伝子治療の可能性を検討する目的で、慢性腎不全モデルラットの腎と肝での基礎的なEPO産生状態を把握しつつ、EPOの遺伝子治療の可能性を検討した。 腎におけるEPO産生(腎でのEPO-RNAと血中EPO濃度)は腎不全のレベルによって異なり、軽度-中等度の腎不全では産生がわずかながら正常ラットより有意に増加し、高度腎不全では再び産生が正常ラットレベルまで低下した。次に瀉血、もしくは輸血負荷を検討したところ、軽度-中等度の腎不全では正常と同様なEPO産生調節が認められ、一方、高度腎不全では瀉血負荷に対応した充分なEPO産生増加が認められず、輸血負荷では生存に影響することも明らかになった。以上の結果より、中等度腎不全までは貧血の進行は生理的必然性に応じたものであり、治療的EPO投与の必要性がないことを示しており、一方、高度腎不全でのみ病的EPO産生低下が生じて貧血が進行するが、輸血実験が示すごとく、過剰な貧血の補正には充分な注意が必要であることも判明した。 肝臓におけるEPO産生の検討ではすべての腎不全において肝臓におけるEPO-RNAは有意に増加し、EPO産生に影響する酵素の解析でもEPO産生増加の妥当性が確認された。しかし、その増加量は腎でのEPO産生量と比較して大変少なく、貧血に与える影響が少ないことも判明した。 以上の結果より、保存期腎不全でのEPO遺伝子治療の適応は高度腎不全に限局されるが、遺伝子理療のターゲットとなる肝でのEPO産生能力に問題があり、さらに対象の高度腎不全では治療による貧血の改善が過剰となると生命的にも問題が生じる可能性も明らかとなり、遺伝子治療の必要性は必ずしも高くないことが判明した。
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