2005 Fiscal Year Annual Research Report
新規ヒト腎炎モデルマウスの病態解析及びTh1/Th2転写制御による治療の試み
Project/Area Number |
17590819
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
楊 景尭 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 講師 (90323302)
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Keywords | T細胞 / 腎炎 / Th1 / Th2 |
Research Abstract |
最近、免疫異常を呈するflaky skin(fsn)ホモ変異マウスが注目され、糸球体に免疫複合体の沈着が生じ、糸球体腎炎を呈するほか、ヒト乾癬に類似した皮膚炎、血清免疫グロブリンIgG1、IgE、IgAおよび抗核抗体の上昇が報告されている。このマウスは糸球体腎炎のほか、しばしばヒトIgA腎症でも合併する乾癬を呈するため、今まで報告されている腎炎のモデルマウスとは異なり、新たなヒトIgA腎症関連モデルマウスとなりうることが期待される。また、本マウスが呈する乾癬およびIgE高値は、ヘルパーT細胞のTh1型及びTh2型それぞれの表現型であり、ヒト腎炎でも、Th1/Th2の表現型が論じられているが、しばしば両者の混在が認められることからも、fsnマウスの解析は新たな知見が得られる可能性が高い。さらに、このマウスと研究代表者が作製したTh1/Th2制御関連転写因子を過剰発現するトランスジェニックマウスとを掛け合わせることにより、腎炎が改善されるかどうかを検討するほか、腎炎におけるTh1/Th2制御による治療応用への可能性についても検討することを本実験は目的とする。平成17年度において、以下の研究結果を得た。1、腎炎解析:腎炎の正確な発症時期の特定を行うため、生後8週、12週、16週の蓄尿及び血清を検討し、腎機能の評価を計画した。交配によりfsnマウス18匹を得ることができ、腎炎の評価では、血清クレアチリン値の8週と12週時点では有意な差は認められていない(8週、fsn:0.30±0.04、野生型:0.34±0.04;12週fsn:0.28±0.02、野生型:0.32±0.10(mg/dl))。16週以降にてfsnマウスの死亡率が高まることから、今後16週のも含め、尿蛋白、腎機能(クレアチニンクリアランス)測定及び腎組織(光顕、蛍光、電顕)の評価を行う予定である。また、腎疾患増悪の原因と考えられる血清免疫グロブリン、及び血清抗核抗体(dsDNA)も週齢ごとに測定する予定である。2、リンパ球解析:fsnマウスの原因遺伝子として同定されたTtc7遺伝子は造血幹細胞やB細胞、脾臓、胸腺等で発現が認められ、fsnマウスは脾臓の肥大が認められることから、16週令の胸腺と脾臓において、FACSによってTリンパ球の分化マーカー(CD3,CD4,CD8など)を確認した。その結果、胸腺においてfsnマウスはCD4^+CD8^+細胞が野生型に比べ極端に少なく、Tリンパ球の分化異常が認められた。今後はTリンパ球の分化異常における詳細な解析も同時に行う予定である。3、VA-T-betマウスおよびVA-GATA-3マウスとの掛け合わせ:fsnマウスの病態解析のため、Th1及びTh2転写因子のT-betとGATA-3をT細胞に発現するVA-T-betマウスおよびVA-GATA-3マウスとの掛け合わせを行っている。今後はマウスの誕生を待って、腎障害およびT細胞サブセット(Th1/Th2の細胞内サイトカイン産生)を含めたリンパ球解析を行う予定である。
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