2006 Fiscal Year Annual Research Report
脳卒中急性期における血圧変動と脳循環自動調節能障害の経時的評価
Project/Area Number |
17590876
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
飯島 献一 島根大学, 医学部, 助手 (70314622)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 修平 島根大学, 医学部, 教授 (80135904)
小林 祥泰 島根大学, 医学部, 病院長 (00118811)
狩野 賢二 島根大学, 医学部, 検査技師 (20379689)
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Keywords | 脳卒中急性期 / 血圧変動 / 脳循環自動調節能 / 近赤外線スペクトロスコピー / head-up tilt試験 / Tone-entropy法 |
Research Abstract |
研究計画に基づいて、1.Brain Oxymeter TOS96(TOSTEC)を用いて近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)法によりhead-up tilt試験前後での血圧変化と脳内酸素飽和度及び血液量の変化を測定することにより、脳循環自動調節能を評価する。2.心拍、血圧変動解析システムANS-508(日本コーリン)を用いてトノメトリー法による一拍毎の心拍、血圧連続測定を非観血的に行い、心拍変動の周波数解析による副交感神経の定量的機能評価に加えて、一拍毎の連続血圧変動を解析することにより、交感神経の評価や圧受容体反射感受性の評価を行う。の2項目に関しては、すでに我々はNIRSを用いて、Shy-Drager症候群やオリーブ橋小脳萎縮症で脳循環自動調節能が障害されており・交感・副交感神経の機能低下が関与していることを報告し、NIRSを用いたhead-up tilt試験で脳循環自動調節能障害を評価できることを確認した。平成17年7月1日以降228名の患者にhead-up tilt試験を施行し1.2.を解析評価した。さらに、3.ポリグラフシステムPEG-1000を用いて、心電図R-R間隔を持続的に測定解析し、Tone-entropy法によるゆらぎを評価することにより心臓自律神経機能の評価を行うために、ポリグラフシステムPEG-1000を購入し、NIRSとANS-508の検査に組み入れてhead-up tilt試験を施行した。17名の慢性期脳梗塞及び神経変性疾患の患者について意識消失発作や失神の有無で比較検討したところ、起立性低血圧や脳循環自動調節能は相違を認めなかったが、Tone-entropy法の評価では、意識消失発作や失神を来す患者は、起立負荷時にToneが高値、Entropyが低値となり、心臓自律神経の潜在的な機能低下が示唆され、Tone-Entropy法は健常人のみならず、自律神経機能異常が疑われる患者の機能評価にも有用であると考えられた。平成18年度は発症1週間以内の急性期脳梗塞患者72例(平均71歳、テント下梗塞14例、テント上ではラクナ梗塞12例、アテローム血栓性梗塞20例、脳塞栓13例、TIA13例)に対して、脳ドック受診健常成人と比較して、病型、病変、危険因子について検討した。また、対象を臥位収縮期血圧(SBP)別に1群(SBP<120mmHg)、II群(120<SBP<140)、III群(140<SBP<160)、IV群(160<SBP<180)、V群(SBP>180)に分類し、血圧変動、脳循環自動調節能障害、Modiffied Rankin Scaleを用いた退院時の予後について検討した。結果は脳循環自動調節能障害は18%に認められたが、起立性血圧変動との関連は認められなかった。起立負荷時の血圧低下はSBP高値群(V群)が低値群(I,II群)に比して有意に大きかったが、脳循環自動調節能はSBP高値及び低値群(I,V群)がIII群に比して障害されやすいと考えられた。予後との関連ではSBP高値が退院時予後不良の予測因子であった。心拍変動の周波数解析ではhead-up tilt時の交感神経機能低下が退院時予後不良と関連している可能性が示唆された。急性期の血圧管理は、脳循環自動調節能を考慮して行う必要性があると思われた。Tone-entropy法の評価は今後例数を増やして検討していく予定である。
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