Research Abstract |
1.ドパミンおよびドパミンキノンとの相互作用・結合分子の検討 昨年度に引き続き,ドパミン(DA)セミキノンin vitro生成系での電子スピン共鳴法によるDAキノン(DAQ)検出を行い,DAQと相互作用・結合する分子をパーキンソン病(PD)病態関連分子を中心に検索した.DAQに結合する金属結合蛋白メタロチオネイン1(M71),数種のDAアゴニストに加えて,あらたに1種の中枢神経作用薬がDAQを速やかにメラニンに変換することを明らかにできた. 2.培養神経細胞でのDA神経障害およびキノン毒性とキノン消去系賦活・抑制の効果 シナプス小胞外の遊離DAを過剰にさせるために,ドパミン系神経細胞CATH. aにメタンフェタミン(METH)を24時間添加したところ,キノン生成の指標となるキノプロテイン(QP:キノン結合蛋白)が用量依存性に増加し,キノン還元・消去酵素NQO1は増加した.これに対して,NQO1の賦活薬BHAの前処置を行うと,METH添加によるQP増加,細胞障害性が有意に抑制できた.さらに,綱胞内DAを枯渇させると,METH添加によるQp増加は抑制された.また,DAQを消去することがわかったM71のキノン毒性への効果について検討した.CATH. a細胞への過剰DA添加によるQP増加ならびに細胞死は,M71を誘導ずる亜鉛添加により抑制された. 3.PDモデル動物でのL-DOPA投与によるキノン消去系の変化とその修飾の効果 DA神経毒6-OHDAによる片側PDモデルマウスの障害側線条体において,NQO 1遺伝子発現を促進する転写因子Nrf2の神経細胞での活性化ならびにDAQ消去にはたらくグルタチオンの合成基質のアストログリアでの取り込み部位の発現増加が認められた.さらに今回DAQを無毒化することが明らかになった中枢神経作用薬の併用投与により,障害側黒質でのDA神経の脱落および障害側線条体でのL-DOPA連目投与によるQPの著増が抑制された.また,片側PDモデルの障害側のDA神経障害は,野生型に比べM71ノックアウトマウスでより顕著であり,システイン基含有分子がDAQ毒性に対して保護的にはたらくことを明らかにした.
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