2006 Fiscal Year Annual Research Report
運動ニューロン選択的変性を誘導する変異型SOD1の細胞種別毒性の解析
Project/Area Number |
17590907
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Research Institution | National Institute of Neuroscience, NCNP |
Principal Investigator |
舘野 美成子 国立精神・神経センター, 神経研究所 疾病研究第五部, 室長 (50332325)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 良輔 京都大学, 医学部, 教授 (90216771)
荒木 敏之 国立精神・神経センター, 神経研究所 疾病研究第五部, 部長 (70263275)
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Keywords | 脳神経疾患 / 神経科学 / プロテオーム / ALS / SOD1 |
Research Abstract |
昨年の研究により、家族性ALSの原因遺伝子産物である変異型SOD1タンパクの構造異常体は、変異型SOD1トランスジェニックマウス(ALSモデルマウス)の脊髄運動ニューロン軸索内で特定のキネシンと結合していること、このキネシンによって輸送される担体の輸送量が脊髄運動ニューロン軸索内で特異的に減少していること、を発見した。よって変異型SOD1毒性の一つとして"脊髄運動ニューロンの特定の担体輸送障害"が強く示唆されたので、今年度は培養細胞を用いた系で、変異型SOD1タンパクによる軸索輸送障害機構の詳細を解析した(1,2)。この結果については、現在投稿準備中である。 1.NG108-15細胞内で誘導されたSOD1構造異常体も、アセチルコリン代謝関連分子を輸送するキネシンと結合する。 ALSで特異的に障害される脊髄運動ニューロンはコリン作動性であり、この性質が変異型SOD1毒性に対する高い脆弱性と密接に関わっている可能性が指摘されている。我々が発見した変異型SOD1タンパク構造異常体と結合するキネシンの担体にはアセチルコリンの代謝に関わるものが含まれていたので、解析にはコリン作動性ニューロン様に分化し得るNG108-15細胞を用いた。NG108-15細胞に野生型・変異型SOD1遺伝子を導入・分化誘導後に酸化ストレスを与えると、変異型SOD1遺伝子を導入した細胞でのみSOD1構造異常体が検出された。このSOD1構造異常体を抗SOD1抗体を用いて免疫沈降すると問題のキネシンも共沈することから、変異型SOD1トランスジェニックマウス脊髄中と同様に、SOD1構造異常体とアセチルコリン代謝関連分子を輸送するキネシンは結合し得ることが示された。 2.SOD1構造異常体系性により、軸索輸送による細胞毒性 分化したNG108-15細胞は刺激(KC1など)に応じてアセチルコリンを放出する。1.の実験系においてKC1処理を行い倍地中に放出されたアセチルコリン量を測定したところ、変異型SOD1遺伝子を導入された細胞でのみ有意に減少が認められた。よって、このキネシンがSOD1構造異常体と結合することでアセチルコリンの代謝を担う分子の輸送が障害され、その結果神経終末におけるアセチルコリンの合成・放出が減少した可能性が強く考えられる。ALSモデルマウスでは発症に先立って神経筋接合部の異常が報告されており、今回の培養細胞を用いた結果はALSの初期病態を説明し得る貴重な知見と思われる。
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