2006 Fiscal Year Annual Research Report
インスリン誘導性転写因子の発現制御機構と作用機序の解析
Project/Area Number |
17590921
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
山田 一哉 福井大学, 医学部, 助教授 (20263238)
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Keywords | インスリン / 転写因子 / SHARP-2 / 糖尿病 / PEPCK / AMPK |
Research Abstract |
ラットの肝臓において、インスリンにより発現が誘導されるbasic helix-loop-helix型転写抑制因子として、enhancer of split-and hairy-related protein-2(SHARP-2)遺伝子を同定している。本研究では、先ず、SHARP-2遺伝子の発現とインスリンにより発現が抑制される糖新生系酵素ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)遺伝子の発現との関係について検討した。インスリン応答性を有する高分化型肝癌細胞であるH4IIE細胞や初代培養肝細胞に、SHARP-2 mRNAを過剰発現するアデノウイルスベクターを感染させたところ、PEPCK mRNA量の減少を認めた。また、SHARP-2発現ベクターとPEPCK遺伝子のプロモーター領域を含むリポーターベクターを高分化型肝癌細胞であるMH1C1細胞にコトランスフェクションしたところ、PEPCK遺伝子プロモーター活性が特異的に低下することを見いだした。これらの結果から、SHARP-2は、PEPCK遺伝子の転写抑制に関わる転写因子であると結論した。次に、SHARP-2遺伝子のインスリンによる転写促進機構を解析するために、SHARP-2遺伝子のプロモーター領域を含む各種のDNA断片をルシフェラーゼリポータープラスミドに挿入したプラスミドをH4IIE細胞にトランスフェクションし、インスリン存在下と非存在下でのプロモーター活性を比較した。その結果、SHARP-2遺伝子の転写開始点上流10kbまでの領域には、インスリンによる転写促進に関与するエレメントは存在しないことが明らかになった。一方、脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンは、AMP-activated protein kinase(AMPK)を介して、肝臓のPEPCK遺伝子の発現を低下させることにより血糖低下作用を示すと考えられている。そこで、AMPKがSHARP-2遺伝子の発現に影響を及ぼすかどうかを検討するために、AMPKの活性化剤であるAICARで処理したH4IIE細胞を用いて、SHARP-2 mRNAの発現量をノーザンブロット解析した。その結果、AICARは、インスリンの場合と同様に、処理後2時間と比較的早期に、一過性にSHARP-2 mRNAの発現を誘導することが明らか1こなりた。したがって、AMPKがSHARP-2遺伝子の発現を制御している可能性が考えられた。
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