Research Abstract |
代謝異常におけるGH/IGF-I系の病態生理的意義に関する研究に関して本年度は以下に示す所見を得た。 1)GH/IGF-I系よる11β-hydroxysteroid dehydrogenase(HSD)の制御とその生理的意義の解明 3T3-L1マウス脂肪前駆細胞にGHあるいはIGF-1,あるいはこれらの組み合わせで,種々の時間処理し,処理後の11β-HSD1をWestern immunoblotで検討した。従来の34kDaに免疫活性を認めず,実験に苦慮していたが,より大きなサイズの部位(〜50kDa)に免疫活性を確認しえた。現在,GH/IGF-Iの11β-HSD1の免疫活性,生物活性,mRNA量に及ぼす影響について検討中である。 2)GH/IGF-1系のアディポサイトカインに及ぼす作用と代謝異常 脂肪細胞より分泌されるアディポネクチン(Ad)はインスリン感受性を増強することが報告され,インスリン感受性の規定因子として注目されている。血中Adは多量体として存在し,3量体や6量体の低分子量Adのみならず,12〜18量体の高分子量(HMW)Adとして存在する。最近,総(Total)AdよりもHMW Ad値の方が,インスリン感受性の良い指標となることが示唆されている。成人GHDではしばしばインスリン抵抗性を呈するが,本症における血中HMW Ad値を測定し,インスリン抵抗性との関連について検討した。【方法】成人GHD64名(男/女:29/35),健常成人67名(男/女:31/36)を対象とし,Total AdおよびHMW-Ad血中Ad値をELISA(それぞれ,大塚アッセイ研究所および富士レビオ社製キット)にて測定し,BMI,HOMA-Rなどとの関係を検討した。【結果】GHDのBMI,HOMA-Rの平均は各々23.9,3.0であり,健常人(21.3,1.5)に比べて有意に高値であった。一方,HMW AdおよびTotal Adの平均はGHDでは5.4,8.8μg/mlであり,健常人(7.1,11.1μg/ml)に比べて有意に低値を示した。GHD,健常人ともHMW AdはHOMA-R,BMIと有意な負の相関(R=-0.60,-0.35;-0.35,-0.37)を認めた。HMW/Total AdはGHD,健常人で0.57,0.60と差を認めなかったが,両群ともHOMA-Rと負の相関を認めた(R=-0.45,-0.49)。【考察】血中HMW Ad値はGHDでは健常人より低く,HMW Ad, HMW Adの占める割合はインスリン抵抗性と負の相関を示した。これらの成績はGHDにおけるインスリン抵抗性にHMW Adが関与することが示唆された。
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