Research Abstract |
1.GH/IGF-I系よる11β-hydroxysteroid dehydrogenase(HSD)の制御とその生理的意義の解明 3T3-L1マウス脂肪前駆細胞を脂肪細胞に分化させ分化誘導過程の各時期,分化後GHあるいはIGF-Iで種々の時間処理し11β-HSD1活性を測定した。11β-HSD1活性は,脂肪前駆細胞で極めて低く,脂肪細胞への分化が終了する誘導8日目で最高値となりその後再び減少した。分化誘導8日目の脂肪細胞をGH(100nM)で処理したところ,24時間処理でも対照細胞の約80%活性が維持されていた。IGF-I(0.1nM)で処理すると,処理後2時間以降24時間まで,対照細胞の約20-30%まで活性が抑制された。11β-HSD1活性は,脂肪細胞への分化とともに増加し,この活性はGHにより軽度に,IGF-Iにより強く抑制された。これらの結果は,GH分泌不全症では脂肪組織での11β-HSD1活性の抑制が解除しコルチゾールが増加,これに応答した脂肪酸合成が上昇し,組織中の脂肪量が増加するという可能性を示した。 2.成人成長ホルモン分泌不全症(AGHD)における代謝異常に関する検討 AGHDでは体脂肪(特に内臓脂肪)の増加に伴いインスリン抵抗性をきたすと考えられている。脂肪細胞より分泌されるアディポネクチン(Ad)はインスリン感受性を増強することが報告され,インスリン感受性の規定因子として注目されている。前回我々は成人GHDにおいて血中Ad値が健常人より低値であり,インスリン抵抗性と相関することを報告した。今回GH治療中の血中Ad値を測定し体脂肪の変化との関連を検討した。成人GHD15例(男/女:5/10)を対象とし,GH治療前,24,48週後の血中Ad(総(T),高分子量(H))値および体脂肪を測定した。GH治療前,24,48週における成人GHDのIGF-IおよびIGF-I SD score(中央値)は各々70,150,150ng/ml,-1.9,-0.2,0.3SDであった。体脂肪量および体脂肪率は各々17.0,14.6,15.7kg,31.5,26.3,26.4%と有意な減少を認めた。血中T-Ad値およびH-Ad値は各々6.7,8.3,9.7および3.5,3.8,5.2と増加を認めた。【考察】成人GHDではGH治療により体脂肪の減少に伴い血中Ad値は増加を認めた。これらの成績はGH治療に伴うAdの増加が代謝改善に寄与する可能性が考えられた。
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