Research Abstract |
平成17年度の研究の結果,C57BL/6マウス(野生型マウス)にヒトβ_2-glycoprotein I(hβ_2GPI)を能動感作することにより,実験的抗リン脂質抗体(APS)モデルマウスの作成に成功した.平成18年度はICAM-1,P-selectin, E-selectinノックアウト(KO)マウスに対し,hβ_2GPIを能動感作し,抗リン脂質抗体(aPL)の発現,および易血栓性の誘導が惹起されるか否かにつき検討した. P-selectin, ICAM-1 KOマウスではhβ_2GPI能動感作により,野生型マウス同様,血小板数の低下,APTTの延長,β_2GPI依存性抗カルジオリピン抗体(aCL/β_2GPI)の上昇を認め,aPLが誘導されたものと考えられた.一方,E-selectin KOマウスではこれらの検査所見の変化は見られず,aPLは誘導されなかった. 次に,野生型APSモデルマウス,各種接着分子KOマウスにlipopolysaccharide (LPS)を投与した.野生型APSモデルマウスでは,野生型無感作マウスと比較して,有意の血小板数の低下,fibrin degradation products (FDP)の上昇,腎糸球体フィブリン血栓(%GFD)の上昇が見られたが,各種接着分子KOマウスではこれらの変動は野生型無感作マウスと同程度であった. 以上の結果より,抗リン脂質抗体の発現にはE-selectinが,APSにおける血栓症の発症にはP-selectin, ICAM-1などの接着分子が関与することが示された.
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