2005 Fiscal Year Annual Research Report
KIT遺伝子異常が白血病におよぼす影響とその分子標的療法の確立
Project/Area Number |
17590992
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
西井 一浩 三重大学, 医学部附属病院, 助手 (50332713)
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Keywords | c-kit / mutation / tyrosine kinase / acute myeloid leukemia / t(8;21) AML / inv(16) AML |
Research Abstract |
KITはサイトカインのひとつであるStem cell factor(SCF)の受容体であり、SCF/KITを介したシグナル伝達は未分化血液細胞の増殖・分化に非常に重要であることが知られている。血液腫瘍細胞においてもKITからの刺激が細胞増殖ならびにapoptosis抑制に関して重要であることが示唆されている。一方、消化管腫瘍のGISTやMastocytosisではKIT遺伝子のpoint mutationが見出され、この異常がSCFの存在の有無にかかわらずKITの恒常的tyrosine kinase活性をうながしていることが報告され、このことが深く細胞の癌化に関与している可能性が考えられている。 我々は、白血病細胞におけるKIT遺伝子異常を検索し、KIT遺伝子異常を持つ白血病細胞の特性および腫瘍化の機序を検索するとともに、分子標的療法の可能性につき検討を加えている。 現在までの検討した結果では (1)急性骨髄性白血病(AML)の約5%に恒常的活性化をもつKIT遺伝子異常を検出し、この異常を持つ白血病は全て染色体異常であるt(8;21)もしくはinv(16)をもつcore binding factor (CBF) leukemiaであった。 (2)t(8;21)AMLの17%にKIT遺伝子異常が認められたが、これらのAMLはKIT遺伝子異常を持たないt(8;21)AMLに比べ明らかに予後不良であった。 (3)t(8;21)AMLではKIT遺伝子異常はexon 17に見られ、inv(16)AMLではその異常はexon 8に集中しており、腫瘍特異的遺伝子異常が示唆され、KIT遺伝子異常が細胞特異的な発癌と深く関与していることが示唆された。 (4)tyrosine kinase inhibitorのひとっであるSTI571による抗腫瘍効果はexon 8に異常を持つ白血病細胞には効果がみられたもののexon 17に異常をもつ白血病細胞に効果は見られなかった。 以上のことより、KIT遺伝子異常はcore binding factor leukemiaに特徴的なことであり、この異常を持つAMLは独立した疾患として治療法の開発が重要であると思われた。
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