2006 Fiscal Year Annual Research Report
リボゾーム蛋白S19欠損赤芽球癆の病態解析と新しい治療法開発
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17591021
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
浜口 功 国立感染症研究所, 血液・安全性研究部, 室長 (90348780)
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Keywords | 先天性赤芽球癆 / RPS19 / siRNA / G0期停止 |
Research Abstract |
先天性赤芽球癆の約25%でRPS19遺伝子に変異があることが知られる。しかしながらRPS19の変異が引き起こす赤芽球特異的な増殖抑制のメカニズムは明らかではない。 RPS19遺伝子の変異と先天性赤芽球癆との関係を調べるために、これまでに報告された12種類のRPS19点変異体についてFLAGタグ融合RPS19(RPS19-FLAG)を発現するレトロウイルスベクターを作製した。赤芽球系細胞株K562細胞および骨髄CD34+(BM CD34+)細胞に導入し、抗FLAG抗体でRPS19-FLAGの発現をFACS解析した。その結果、作製した12ヵ所の点変異体のうち11ヵ所の変異でK562細胞とBM CD34+細胞で共に著しいタンパク質発現量の減少が観られた。またプロテアソーム阻害剤MG132によってタンパク質発現が回復したことからRPS19点変異体はプロテアソームで分解されると考えられた。そこでRPS19に対するsiRNA発現レンチウイルスベクターによるRPS19の発現抑制を試みた。K562細胞にsiRNAを導入し、Pyronin Y/Hoechst33342(HO342)とKi67/HO342染色で細胞周期解析したところ、RPS19の発現抑制によって細胞周期のG0期停止が誘導された。このことはG1-S期への移行に重要なRbタンパク質の脱リン酸化の亢進が観られたことからも裏付けられた。さらに骨髄CD34+細胞にsiRNAを導入しKi67/HO342染色で細胞周期解析したところ、同様にRPS19の発現抑制によってG0期の細胞が増加し、同時に赤芽球系前駆細胞(CD34+,CD71high,CD45RA-)分画の顕著な減少が認められた。siRNAを導入したK562細胞およびBM CD34+細胞のアポトーシス陽性率は1%以下であり細胞増殖抑制の本態は細胞周期停止にあると考えられた。 これらのことから先天性赤芽球癆のRPS19点変異では造血幹細胞-前駆細胞の段階においてタンパク質レベルでRPS19発現量が低下し、この発現量の減少により細胞周期のG0期停止が誘導され細胞増殖が抑制される結果、赤芽球系前駆細胞の減少に伴い赤芽球癆が起こることが考えられる。
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