2006 Fiscal Year Annual Research Report
中枢神経系のグリシン濃度調節に関わる遺伝子群の体系的変異探査
Project/Area Number |
17591067
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
呉 繁夫 東北大学, 大学院医学系研究科, 助教授 (10205221)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大浦 敏博 東北大学, 大学院医学系研究科, 助教授 (10176828)
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Keywords | 高グリシン血症 / GLDC / AMT / GCSH / 新生児けいれん / 髄液 / 遺伝子解析 / 変異スペクトラム |
Research Abstract |
平成17年度に引き続き、血中ないしは髄液中グリシン濃度の上昇をきたした120家系の候補遺伝子解析を行った。解析した120症例のうち高グリシン血症の既知責任遺伝子である、GLDC, AMTの二つの遺伝子で説明できるのは、全体の約70%のみと推察される。本年度の研究目的は、これらの病因遺伝子が特定できない症例の体系的な候補遺伝子解析を行い、責任遺伝子変異を明らかにし、その機能解析を通じて病態を解明する事にある。昨年度までに全てのDNA検体のGLDC, AMT遺伝子変異を全エクソンの塩基配列を決定する方法で終了し、GLDCないしはAMT遺伝子の変異を認めない35症例を検索対象とした。脳内グリシン濃度の影響を与えると考えられる候補遺伝子として、GCSH, DLD, LPT, GLYT1,GLYT2、5種類の遺伝子を対象に遺伝子変異解析を行った。GLDC, AMT, DLD, LPは代謝酵素であり、GLYT1とGLYT2はグリシン特異的トランスポーターである。もっとも明らかな変異は、GCSH遺伝子に認められた。GCSH遺伝子のイントロン4のスプライス受容部位で、コンセンサス配列であるATからGTへの変異をヘテロ接合子として認めた。この症例は、一過性高グリシン血症と考えられ、他の症例にはGCSH遺伝子変異は検出されなかった。もうひとつの変異は、LPT遺伝子内に見出した。LPT遺伝子上に-塩基置換を認め、コードするアミノ酸がアルギニンからグリシンへと変化していた。この部位は、他の生物種で極めてよく保存されており、機能的に重要なアミノ酸残基と考えられる。他の3種類の遺伝子には機能喪失変異と考えられる変化は認められなかった。以上から、高グリシン血症を惹き起こす責任遺伝子GLDCやAMTの他にも存在するものと考えられた。
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Research Products
(6 results)