2005 Fiscal Year Annual Research Report
3次元モデルを用いた微少残存白血病細胞の動態解析に基づく再発予知的治療戦略の創成
Project/Area Number |
17591073
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
犀川 太 金沢大学, 医学部附属病院, 講師 (60283107)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小松崎 俊彦 金沢大学, 自然科学研究科, 助手 (80293372)
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Keywords | 顆粒球造血 / コンピュータシミュレーション / システム生物学 / 細胞動態解析 |
Research Abstract |
セルラオートマトン法を用いて顆粒球系造血モデルを構築した。幹細胞から成熟好中球までの造血過程を分裂期細胞と非分裂期細胞に大別し、分化段階に応じて15段階に分画化した。実験的に得られている分裂回数および通過時間(分化に要する時間)に対応した計算ステップ数をそれぞれの分化段階に設定した。本モデルの解析には、骨髓を想定した3次元空間を設定し、生体の骨髓に存在する骨梁や血管を構造物として取り入れた近似的骨髓空間を構築した。解析空間を130個×130個×130個(2,197,000個)の区分領域に分割し、1つの区分領域は細胞1つ分に相当する大きさとした。細胞は、局所近傍則に従って解析空間内の区分領域から隣接する区分領域へ1計算ステップごとに移動し、分化・分裂する。解析空間内の全ての細胞の現在位置、分化段階を把握し、シミュレーション結果を抽出可能とした。更に、シミュレーション中の全体の現象を直接モニター上に表示し、視覚的に造血過程を観察した。この造血モデルを用いて造血システムの恒常性維持、抗がん剤投与、およびG-CSF投与時の顆粒球造血過程の細胞動態を解析し、臨床データとの比較からモデルの有用性を検討した。 [結果]1.本モデルは定常状態に変動を与えられても、再び定常状態に回復する恒常性と頑丈性を示した。本モデルでの幹細胞の動態解析から、幹細胞の通過時間および自己複製時間はそれぞれ33.3日、16.7日と算出された。2.抗がん剤投与モデルでは、分裂期細胞の消去により、好中球減少が投与後7日後から出現し、臨床的データに一致した。更に、連続した治療による好中球減少期間の遷延化も再現可能であった。3.G-CSF投与モデルでは、抗がん剤投与後の好中球減少期間に対する短縮効果を再現し、その短縮期間は臨床データに完全に一致した。好中球減少に対するG-CSFの至適な投与開始日を検討した結果、G-CSFは好中球減少後に投与されても、好中球減少前に投与開始した場合と同等な好中球減少期間の短縮が可能であることが示された。 本年度の研究により、骨髓内顆粒球系細胞の動きを再現し得る造血モデルの骨格が構築された。
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