2005 Fiscal Year Annual Research Report
神経芽腫分子療法のターゲット再考:細胞死誘導におけるp53経路の意義
Project/Area Number |
17591077
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
上條 岳彦 信州大学, 医学部附属病院, 講師 (90262708)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小池 健一 信州大学, 医学部, 教授 (40143979)
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Keywords | 神経芽種 / p53 / Noxa / Mitochondria / HDM2 |
Research Abstract |
1.はじめに p53はさまざまなヒト腫瘍で変異している最も重要ながん抑制遺伝子であり、細胞に対して増殖抑制、細胞死促進、染色体の安定化などの重要な機能を持つ。しかしながら神経芽腫ではp53変異は報告が少なく、発がんへの関与は少ないと考えられてきた。このp53をユビキチン化して分解に導く蛋白がMDM2である。MDM2が遺伝子増幅している神経芽腫が存在していることからMDM2も神経芽腫の発がん機構に何らかの寄与をもたらしていることが推測される。しかしながらMDM2が神経芽腫細胞に対して細胞増殖、細胞死抑制をもたらすことが可能か、どのような分子機構でこの細胞増殖、細胞死抑制が行われるかはいまだ解析されていない。 2.目的 MDM2の神経芽腫細胞の機能に与える影響を検討するために、野生型MDM2をSK-N-SH株に遺伝子導入し、その増殖・細胞死を検討する。 3.結果と考察 無刺激時の細胞増殖は有意にMDM2導入株で増加していた。また、DNA傷害刺激であるDoxorubicin(Doxo)投与時にもMDM2導入株で細胞増殖は増加し、この時アポトーシスによる細胞死も抑制されていた。興味深いことに、MDM2導入株では無刺激時からp53の蛋白量が増加していたが、Doxo刺激後のp53蛋白量増加・リン酸化亢進は認められず、p53下流分子のp21Cip1/Waf1,MDM2共に増加していなかった。このMDM2導入株におけるp53の蛋白量の増加の原因について、免疫沈降・ウエスタンブロッティングによって解析したところ、細胞内で導入したMDM2がp53と結合できないことが原因の一つと考えられた。我々はDoxo非感受性神経芽腫株ではDoxoによるp53依存性アポトーシスが抑制されており、このアポトーシスのeffectorがミトコンドリアのpro-apoptotic Bcl-2 family分子であるNoxaであることを報告している。MDM2導入株では、無刺激の状態からミトコンドリア内のNoxaが増加しているが、Doxo刺激による更なる増加は無く、MDM2の導入によるp53経路の不活化がミトコンドリアにおけるNoxaの局在・活性化を制御したことが示された。以上の結果から、MDM2は神経芽腫細胞株の増殖促進・アポトーシス抑制をもたらすことが明らかになり、その分子機構が示された。
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Research Products
(4 results)