2005 Fiscal Year Annual Research Report
亜急性硬化性全脳炎の原因となる麻疹ウイルスの感染・増殖の分子基盤
Project/Area Number |
17591108
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
綾田 稔 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 助手 (90222702)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 博 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 後期臨床研究医 (50382081)
扇本 真治 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 講師 (80292853)
小倉 壽 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 教授 (10115222)
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Keywords | 麻疹ウイルス / 亜急性硬化性全脳炎 / リバースジェネティクス / 神経病原性 |
Research Abstract |
通常の麻疹ウイルスをハムスターに脳内接種しても全く病原性を示さない。一方、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)患者の脳より分離された麻疹ウイルスを接種すると急性脳症を引き起こして短時日のうちに死滅する。私達は、麻疹ウイルスの遺伝子組換え技術を用いて、麻疹ウイルスの感染・増殖の分子基盤を解明しようと試みている。麻疹ウイルス野外株のIC-B株の遺伝子全長をコードするプラスミドを用いて、F遺伝子やH遺伝子をSSPE由来の麻疹ウイルス大阪2株のそれに置き換えたウイルスを作製した。すなわち、F、H遺伝子の両方を大阪2株のそれに置き換えたウイルス(IC323/OSA2FH)、F遺伝子のみを置き換えたウイルス(IC323/OSA2F)、H遺伝子のみを置き換えたウイルス(IC323/OSA2H)の3種類を作製し、これらのウイルスを各種の細胞に感染させて、細胞指向性(レセプターの利用の鑑別)と細胞変性効果を観察した。すると、IC323/OSA2FHとIC323/OSA2Fは、Vero細胞や神経芽細胞腫由来のIMR-32細胞に感染し、シンシチウムを形成できた。このことは、SSPE由来のF遺伝子には、未知の麻疹ウイルスレセプターとの結合によって活性化されて細胞融合能を発揮する変化が生じていることを意味する。また、これらの組換えウイルスは、SSPE由来の麻疹ウイルスと同様に、遊離ウイルス粒子の産生能が著しく低下していた。さらに、IC323/OSA2FHまたはIC323/OSA2Fを脳内接種されたハムスターは、短時日のうちに神経症状を呈して発症し、死滅した。また、IC323/OSA2Hにも若干の神経病原性が認められた。発症したハムスターからウイルスを再分離して脳内での増殖を確認した。現在、大阪1株のF、H遺伝子、あるいは他の遺伝子を組換えたウイルスを作製して同様に検討している。
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