Research Abstract |
先天性ネフローゼ症候群(CNS)は,小児慢性腎不全の原因の一つである。ネフリンはフィンランド型CNSの責任遺伝子産物で,欧米ではその8割以上はネフリン遺伝子(NPHS1)変異が原因である。ポドシン遺伝子(NPHS2)は家族性ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群の原因遺伝子であるが,CNSの原因にもなる。α-アクチニン4遺伝子(ACTN4)変異が常染色体優性巣状糸球体硬化症において同定されている。びまん性メサンギウム硬化症において,Wilms腫瘍の原因遺伝子であるWilms腫瘍抑制遺伝子(WT1)の変異がみられる。CD2-associated protein(CD2AP)は,スリット膜関連分子である。近年,CD2AP遺伝子にヘテロの変異がある巣状分節性糸球体硬化症の2例が報告され,CD2AP遺伝子変異がヒトの腎症にも直接関与している。 日本人CNS患者における,NPHS1・NPHS2・ACTN4・WT1・CD2AP変異の役割を明らかにするため,日本人CNS患者15家系の15例を対象とし,上記の遺伝子解析を施行した。 原因遺伝子同定が不完全な症例において,組織におけるネフリンの発現等を検討したが,原因解明につながる結果は得られなかった。上記遺伝子解析体制を維持し,さらに症例数を増加する予定である。 <結果>1.2例に,CNSの原因となるNPHS1変異,ホモ接合体を検出した(E246Xとnt2156(de18))。 2.2例に,NPHS1のミスセンス変異,ヘテロ接合体を検出した(R460QとD105N)。 3.1例に,CNSの原因となるNPHS2変異,ホモ接合体を検出した(R196X)。 4.1例に,同じNPHS2のナンセンス変異,ヘテロ接合体を検出した(R196X)。 5.ACTN4変異,WT1変異,CD2AP変異を検出しなかった。 <結論>1.日本人CNS患者においてNPHS1変異の原因頻度は低い。 2.日本人CNS患者においてもNPHS2変異は原因となる。 3.ACTN4変異,WT1変異,CD2APは日本人CNS患者の主因ではない。
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