2005 Fiscal Year Annual Research Report
心臓流出路の発生における前方心臓領域細胞と転写因子Tbx1の機能
Project/Area Number |
17591114
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山岸 敬幸 慶應義塾大学, 医学部, 専任講師 (40255500)
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Keywords | 先天性心疾患 / 心臓流出路 / 動脈幹 / 前方心臓領域 / Tbx1 / Forkhead / 転写因子 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
心臓流出路は、胎生期の動脈幹から形成される。これまで動脈幹の発生に関わる細胞として、側板中胚葉由来の細胞と外胚葉神経堤由来の細胞の2種類が知られていた。最近、前方心臓領域(anterior heart field : AHF)とよばれる咽頭弓中胚葉領域に由来し、動脈幹の発生に関与する新たな細胞群が発見された。本研究の目的は、研究究代表者がAHFに発現することを明らかにした転写因子Tbx1に着目し、AHF由来細胞の心臓流出路形成における役割と分子機構を解明することである。本年度は、Tbx1のAHFにおける発現を調節するゲノム領域の重要なDNA配列と、その配列に結合する転写因子について解析した。その結果、Tbx1遺伝子の転写開始点から12.8kb上流にあるForkhead型転写因子(Fox)結合配列(Fox site #1)、および6.8kb上流にあるFox結合配列(Fox site #2)の2つのDNA配列が、Tbx1のAHFにおける発現に必要であることが明らかになった。これら2つのFox結合配列には、Foxa2、Foxc1およびFoxc2転写因子が結合し、量依存性にTbx1の転写を直接制御することが示唆された。さらに、Fox site #1を含むTbx1エンハンサーに連結したCre組み換え酵素遺伝子を導入したトランスジェニックマウスと、R26Rマウスを交配することによりAHF由来細胞を標識し、その発生分化過程を観察した。その結果、Tbx1を発現するAHF由来細胞は、胎生初期には心臓流出路全体と右心室原基を形成し、後期には主に右心室流出路と肺動脈主幹部および肺動脈弁を形成することが示唆された。右室流出路から肺動脈主幹部を構成する細胞の異常は、Fallot四徴症、両大血管右室起始症、総動脈幹遺残症などの先天性心疾患の発症に関与すると考えられる。
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