2006 Fiscal Year Annual Research Report
Fyn欠損マウスの発達過程におけるストレス脆弱性と情動機能異常の分子基盤の解析
Project/Area Number |
17591130
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
湯浅 茂樹 国立精神・神経センター, 神経研究所・微細構造研究部, 部長 (70127596)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相馬 美歩 国立精神・神経センター, 神経研究所・微細構造研究部, 流動研究員 (70328756)
伊藤 雅之 国立精神・神経センター, 神経研究所・疾病研究第2部, 室長 (50243407)
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Keywords | Fynチロシンキナーゼ / 神経細胞移動 / 扁桃体 / 神経新生 / 情動 / NMDA受容体 / 子宮内エレクトロポレーション / cDNAマイクロアレイ |
Research Abstract |
本研究では情動障害を示すFynチロシンキナーゼ遺伝子欠損マウスをモデルとして、情動系機能の発達障害の基盤となる分子神経機構を解明することを目的とする。胎生期前脳における神経細胞移動ならびに生後の脳発達過程における神経新生はストレスに対する脆弱性の基盤となる可能性が高く、これらの動態と分子制御機構は情動系を含む高次脳機能の発達障害の基盤解明に重要な手がかりを与えると考えられる。そこで、マウス胎生期の大脳新皮質発生過程におけるFynの機能解析とともに、生後の扁桃体、線条体機能におけるFynの機能的意義を解析した。さらに自閉症の生後発達過程で扁桃体の発達障害が認められることから、胎生期から生後の扁桃体発生・発達の解析もおこなった。 1.大脳新皮質発生の分子制御におけるFynの機能解析 Fyn欠損マウスでは新皮質II-III層の形成障害があることを既に示していた。層特異的形成障害の基盤として、Fynの発現がII-III層の形成時期に対応することを明らかにした。更に細胞移動制御にかかわるfocal adhesion kinase(FAK)がFynシグナル伝達の下流に位置し、しかもFynの発現と時間ならびに空間的に並行して発現することを明らかにした。 2.扁桃体の情動制御に関連したFynの機能解析 Fyn欠損による扁桃体機能鍵障害}こはNMDA受容体のシグナル伝達異常が関わることを明らかにしていた。そこでNMDA受容体刺激による遺伝子発現変動からFyn欠損により発現異常を示す遺伝子の網羅的解析を行い、Swim6蛋白の遺伝子発現が中心核で特異的に変化していることを見出した。 3.線条体の高次機能との関連におけるFynの機能解析 Fyn欠損マウスは抗精神病薬ハロペリドール投与で異常行動を示すことをすでに見出した。この分子機構を解析し、NMDA受容体NR2Bサブユニットのリン酸化が誘導されず、NMDA受容体のイオンチャネルが活性化されないことが行動障害の基盤の一つであることを明らかにした。 4.扁桃体の発生、発達のメカニズムの解析 マウス扁桃体の発生とその分子制御についてはまだ殆ど知られていないので、外来遺伝子としてEGFP遺伝子を子宮内エレクトロポレーション法によりマウス扁桃体原基に導入して、発生した神経細胞の移動と集団形成様式を明らかにした。更に生後の一定期間に扁桃体、側坐核を含む前脳腹側の限局した領域で神経新生が起こっていることを明らかにした。
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Research Products
(5 results)