Research Abstract |
胎児創傷治癒機構(SWH)とは,胎児期に認められる機構で,どの様な損傷を与えても瘢痕を形成せず正常に皮膚が再生される機構をいい,皮膚再生機構のモデルである。本年度は,1)SWHを認めるマウス胎児に特異的に発現する遺伝子をdifferential display(DD)法やSAGE法で解析して同定する。2)真皮内ヒアルロン酸(HA)含量の高値もこの機構の特徴である。このHAを生化学的に解析し,成獣皮膚に投与して人為的に胎児創傷治癒機構を誘導させる。この条件下の特異的発現遺伝子の中からマスター遺伝子決定を目指す。 その結果,本年度は,1)SWHを認めるマウス胎児皮膚のmRNAを用いてDD法を行い,機構特異的な遺伝子40種類以上を検出した。また詳細をSAGE法によって更に解析した結果,HA合成酵素,VII型コラーゲン遺伝子の特異的発現制御を新たに見出した。従って,来年度はこれら各遺伝子のSWHにおける発現制御機構の詳細を明らかにしたい。2)SWH機構の詳細を明らかにするため,HA合成阻害剤4-メチルウンベリフェロン(MU)を,SWHを認める培養マウス線維芽細胞に添加した。その結果,HA合成酵素遺伝子の発現にはMUは影響しなかったが,VII型コラーゲン遺伝子の発現を促進した。従って,来年度はMUによるVII型コラーゲン遺伝子発現促進機構の詳細を明らかにしたい。3)SWH特異的なHAの性状を生化学的に解析した。SWHを認める皮膚からHAをグアニジン塩酸抽出,カラムクロマト(ゲルクロマト,イオン交換クロマト,アフィニティークロマト等)及びHPLC等で単離精製した。現在,そのサイズ,粘性及び保湿能を測定する研究を進める他,SWHに対するHAの機能性ドメインの決定のため,各種サイズのHAオリゴ糖の調整を行っている。
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