2007 Fiscal Year Annual Research Report
ケラチン点突然変異をモデルとした優性抑制解除法の開発。
Project/Area Number |
17591169
|
Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
田中 俊宏 Shiga University of Medical Science, 医学部, 教授 (50188314)
|
Keywords | ケラチン9 / 点突然変異 / 掌蹠角化症 / 先天性表皮水庖 / 遺伝性疾患 |
Research Abstract |
平成19年度におこなった実験内容と,その結果は以下のとおりである。 健康人由来の,すなわち野生型のケラチン9(以下,正常ケラチン9と略す)と,患者由来の,すなわちアミノ酸の置換を生じるような点突然変異を持つ変異型のケラチン9(以下,変異ケラチン9と略す)をともに持つ細胞は,細胞内の細胞骨格を形成する最も重要なケラチン繊維に対して,野生型ケラチン9のみを持つ場合は光学顕微鏡のレベルできれいな繊維状の構造を示す事に対して,野生型でない変異ケラチン9をコードする遺伝子断片を挿入された細胞にあっては,ケラチン繊維が光学顕微鏡のレベルで,滴状ないしは短い繊維状の構造を示した。この事実は,我々の考えているモデルは,人にみられる細胞骨格の異常を,細胞のレベルで忠実に再現している事になる。この事実にもとづいて,細胞骨格の異常をもたらす機構が優性抑制である事から,それを解除する実験をおこなった。校正または,変異ケラチン9の分解の促進は,定性的には生じるが,現在までのところ,再現よく,かつ,定量性を持って一定の効果を発揮するとは結論しがたい。この事実は、「自然のおこなう遺伝子治療(natural gene therapy)」といわれている加齢による症状の緩和が、必ずしも遺伝子のレベルでの校正ではなく,かつ,分解過程の促進でもない事を間接的ながら示唆する所見である。以上のように,研究目的に対しては一定の成果を上げると同時に,更に,検討すべき新しい課題の発見につながったと考えられる。
|