2006 Fiscal Year Annual Research Report
覚醒剤精神病の病態メカニズムに関するダブル・トレーサーPET研究
Project/Area Number |
17591204
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
関根 吉統 浜松医科大学, 医学部, 助手 (70324358)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武井 教使 浜松医科大学, 医学部, 助教授 (80206937)
三辺 義雄 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (60181947)
中村 和彦 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (80263911)
森 則夫 浜松医科大学, 医学部, 教授 (00174376)
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Keywords | 脳神経疾患 / 覚醒剤 / PET / ミクログリア / ドパミン |
Research Abstract |
本研究課題の目標事項、即ち、「覚醒剤使用者の活性型ミクログリアの脳内密度を測定し、その変化と臨床的特徴との関連性を検討することにより、覚醒剤関連精神障害の病態発生機序の解明及び同障害に対する新たな治療法開発への一助となること」、を達成するため、以下に要約された研究成果を産生した。 【対象】 対象は覚醒剤使用者12名、及び、年齢、性別、教育歴の一致した健常者12名である。なお、本研究は研究実施機関における倫理委員会で承認を得ており、研究の詳細を説明した後に文書による同意を得た者を対象とした。 【方法】 臨床症状の評価には攻撃性評価尺度(Aggression Questionnaire)を用いた。トレーサは活性型ミクログリアへの結合選択性の高い[^<11>C](R)-PK11195を用いた。活性型ミクログリア密度は、健常群の大脳皮質から得られた時間一放射能曲線を用いてnormalized input curveを作成、これをもとにsimplified reference-tissue modelにより算出される結合能を指標とした。 【結果】 覚醒剤使用群では健常群と比較し、中脳、視床、線条体、眼窩前頭前野、島皮質における活性型ミクログリアの密度が有意に増加していた(p<0.001, Mann-Whitney U test)。覚醒剤使用者のうち、覚醒剤の使用を長期間中断しているにもかかわらず、活性型ミクログリア密度が高い例が認められた。さらに、これらの症例では精神症状も重度であった。 【考察】 今回の結果から、覚醒剤はミクログリアを活性化することが明らかとなった。さらに、この状態は覚醒剤の使用を長期間中断した後も存在する可能性が示された(慢性神経炎症)。これらの結果とこれまでの研究成果とを勘案すると、覚醒剤使用により惹起された神経傷害の修復過程が、慢性神経炎症により障害されている可能性が示唆された。このことは、覚醒剤使用が誘因となる神経傷害、及び、それに基づき二次的に発生する精神障害に対して、抗炎症薬が有効であることが推測された。これらの研究成果は、覚醒剤の使用により誘発された覚醒剤精神障害に対する新たな治療法を開発する上で、非常に有用であると考えられた。
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