2007 Fiscal Year Annual Research Report
ストレス性精神障害の発症機序に関するエピジェネティックプログラムの解明-養育環境による転写機能障害の同定と新規治療法の開発-
Project/Area Number |
17591214
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
森信 繁 Hiroshima University, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (30191042)
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Keywords | BDNF / GDNF / 母子分離 / 拘束ストレス / ヒストン・アセチル化 / 豊かな環境 / 海馬 / バルプロ酸 |
Research Abstract |
研究課題1)母子分離によるストレス脆弱性に対する豊かな環境(EE)の修復効果:成熟後雄性SDラットを対象に、正常飼育群・EE群・母子分離(NI)群・NI+EE群を用いて、脳由来神経栄養因子(BDNF)・グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF) mRNA発現を海馬でreal-time PCR法にて解析した。EEは離乳後3週間(2h/day)、2倍の容積のケージに玩具を装着して行った。その結果、BDNF mRNA発現はNI群でEE群と比較して、exon1,3で有意に減少していた。この2群間でBDNF exon1,3のプロモーター(P)上のピストンH3,H4のアセチル化をChip Assayにて検討した結果、exon1,3のH3のアセチル化の有意な減少がNI群で検出された。GDNF発現の解析では、上記4群間に有意な差は検出されなかった。 研究課題2)母子分離によるストレス脆弱性に対するバルプロ酸(VA)の効果:昨年度の検討からNI群では急性拘束ストレス(AIS)によって、BDNF exon3のP上のH3アセチル化が減少してBDNF mRNA発現の減少を導くことが分かったので、NIラットにVAを投与してAISによるBDNF発現がどのように変化するかを解析した。その結果、AISによるexon3のP上のH3アセチル化の減少は、慢性VA投与によって修復されることがわかった。 上記の研究成果は、豊かな環境やバルプロ酸によって、母子分離に伴うBDNF遺伝子発現を介したストレス脆弱性を、ヒストン・アセチル化というエピジェネティックな機序を介して修復する可能性を示唆していると思われる。
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