Research Abstract |
1.上衣芽腫(ヒト由来,p53野生型),膠芽腫,小細胞肺癌(ヒト由来,p53変異型)をヌードマウス皮下に移植し,X線10Gy照射後3,4.5,6時間に摘出して,凍結切片を作製,乾燥固定後,大気マイクロPIXE (Particle Induced X-ray Emission)で元素分布を検索した.さらに同標本のヘマトキシリン染色後,組織所見(特にアポトーシス,壊死)をPIXEで得られた元素分布と比較した.いずれの腫瘍でも細胞にほぼ一致してP,K,Cl,S等の元素の分布を認めたが,Ca,Si,Feの分布には細胞との有意な相関は認められなかった.上衣芽腫では,高率なアポトーシス誘発を認めたが,PIXEでは有意な変化を指摘できず,細胞内小器官との相関も明らかでなかった.膠芽腫,小細胞肺癌では壊死巣が散見され,P,K,Cl,Sの有意な低下を認めたが,Ca,Si,Feの分布には有意な変化は認められなかった. 2.上衣芽腫、膠芽腫をヌードマウス皮下に移植し,0.25-2.0Gyの炭素イオン線,X線の1回照射後6,48時間に腫瘍,臓器(脳,脾,腎,十二指腸,精巣)を摘出し,パラフィン包埋切片で,アポトーシス,その他を観察した.組織学的検索で6時間後には,脾のリンパ球,十二指腸のクリプト細胞,精巣の精祖細胞,海馬の顆粒層細胞等にアポトーシスの誘発が認められたが,48時間後には大部分が消失していた.腫瘍では,6時間後の上衣芽腫で高率であったが,膠芽腫では比較的低率であった.同一線量の比較では,炭素イオン線の方がX線よりも高率にアポトーシスを誘発していたが,特に放射線抵抗性の膠芽腫でその差が大きく,同一マウスの臓器との比較でも,放射線抵抗性の膠芽腫において炭素イオン線によって誘発されるアポトーシスが相対的に高率で,p53非依存性アポトーシスの関与による生物効果比の向上が示唆された.
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