Research Abstract |
ヒト腫瘍に不均一に含まれている低酸素細胞は,放射線や薬剤に対する抵抗性の主因と考えられている.腫瘍が低酸素状態に長時間置かれると,VEGFなどを介して増殖能や転移能といった腫瘍の悪性度が増すと考えられている.本研究では,これまで行ってきた31P-MRSやMRIによるperfusion imageにくわえて,低酸素細胞マーカーによる低酸素細胞イメージングを用いて腫瘍の酸素状態の測定法を開発するとともに,64Cu,67Cuなどの核種でラベルした低酸素細胞マーカーによるポジトロン診断と低酸素を標的としたミサイル療法の開発研究を行う.また血管新生を抑制する分子標的薬剤と低酸素を標的としたミサイル療法の併用により新しい癌治療法の開発を行うことを目的とした. 正常のp53を持つSASneo細胞と,p53のみに変異を持つSASmp細胞をヌードマウスに移植し実験に用いた,SASmp細胞はSASneo細胞よりも,増殖が早く,壊死しやすい傾向があった.67-Cu-ATSMをマウス尾静脈より静注し,1時間後および24時間後にマウス臓器のRIの分布を検出した.RIの集積は,肝,腎,肺などの実質臓器に比較的高濃度に認められた.血液との分布の比は,血液を1とすると,肝5.15,腎2.33,肺2.32であった.一方中枢神経系への集積は0.67と低かった.SASmp細胞とSASneo細胞のRIの集積の度合いには明らかな違いは認められなかった.腫瘍を摘出し,オートラジオグラフィーを行うと,67-Cu-ATSMは腫瘍の辺縁部に集積していることがわかった.
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