Research Abstract |
平成17年度の研究目的は,外部線源を必要としない^<201>TlCl発生光子の異なった2種類のエネルギー差,すなわち71keVと167keVのエネルギー差を利用した減弱補正と散乱線補正(TEW : Triple energy windows)の同時補正法を開発すること,71keVと167keVの最適な線減弱係数比とカウント比を決定して,減弱・散乱線補正を行ったSPECT画像を構築し,JISファントムによる性能評価(濃度直線性,空間分解能)で本法の有用性を検討すること,さらに,正常および心筋梗塞モデルをシミュレーションした心筋ファントムによる本法の基礎検証である. 円柱ファントムを用い,中心部と外側部のカウント比(中心部/外側部比)を算出した.カウント比が5を超えると中心部/外側部比は減少した.今回,71keVと167keVの最適カウント比は5に決定した.次に,カウント比を5に固定し,線減弱係数比を変化させることによって中心部/外側部比の差を算出した.左記の近似曲線から線減弱係数比を平均し算出した71keVと167keVの最適線減弱係数比は2.2777であった. 上記の最適線減弱係数比とカウント比を入力し,空間分解能ファントムを用いて減弱散乱線補正なし,散乱線補正のみあり,減弱散乱線補正ありの三種類のSPECT画像を構築し,FWHM(半値幅)を比較した.補正なし,散乱線補正のみより吸収散乱補正ありの方が最もrecoveryが大きく,本法を行うことで,FWHM値は中心部と外側部ともに保たれていた.濃度直線性ファントムの検討では,補正の有無に関わらず,濃度直線性は保たれており,有意な正の相関がみられた. 肝臓からの散乱線の影響を検討するため,肝臓に放射能を注入した心筋ファントムを用いた.正常モデルの視覚的評価では,肝臓放射能の有無に関係なく減弱散乱線補正により下壁カウントの回復がみられた. 前壁および下壁の心筋梗塞モデルでは,減弱散乱線補正により前壁,下壁の欠損がより明瞭に描出された.定量的評価では,特に下壁欠損の場合,肝臓放射能の有無に関わらず本法の補正によりカウントが上昇し,欠損部も明瞭に認識できた.
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