2007 Fiscal Year Annual Research Report
PETによる低酸素腫瘍の生化学的・分子生物学的診断に関する基礎研究
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17591260
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
古川 高子 National Institute of Radiological Sciences, 分子イメージング研究センター, チームリーダー (00221557)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤林 康久 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, センター長 (50165411)
内木 宏延 福井大学, 医学部, 教授 (10227704)
藤枝 重治 福井大学, 医学部, 教授 (30238539)
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Keywords | がん / 細胞・組織 / 低酸素 / PET |
Research Abstract |
これまでマニュアルによる遠隔操作で行なってきたCu-ATSMの調製について、ボンバーメント後のターゲットからのCu-64の精製からCu-64のグリシン溶液の調製にいたる工程を自動化し、安全かつ安定な供給体制を整備することができた。 低酸素耐性を獲得させたマウス肺がん細胞株と親株(LLC1)をマウスに移植した場合、腫瘍結節へのCu-ATSMの取り込み量や結節内の分布パターンに有意な差は認められなかった。がん細胞のCu-ATSMの取り込みに関与する酵素(b5reductase,CPR)の発現と培養状態における低酸素耐性は関係するが、結節内では移植後に獲得される性質がより優位にCu-ATSM取り込みに影響するのではないかとの感触を得た。前年度までの検討により、Cu-ATSMの高集積部位においては血管形成やKi-67発現の欠如がみとめられたことから、Cu-ATSMの高集積部位ではがん細胞が増殖の速度を緩め、酸素や栄養の供給など環境の改善を待っている状態にあるのではないかと考えられた。今回細胞増殖のマーカーとして頻用されるBrdUの取り込みのがん結節内の分布とKi67の発現、cu-ATsMおよびFDGの取り込みを比較検討したところ、意外なことにCu-ATSMの高集積部位では一般には重なると考えられるBrdUの取り込みとKi67の発現に乖離が見られ、Ki67の発現がほとんどないにもかかわらず、BrdUの取り込みはCu-ATSMの集積が低い部位に比べて高いことが示された。FDGの高集積部位では逆にKi67を発現する細胞が多く見られたにもかかわらず、BrdUを取り込む細胞は少なかった。細胞周期のS期のはじめ、特にGO期(休止状態)からS期に入った場合の早期のS期ではKi67の発現が低いとの報告があり、Cu-ATSMの高集積部位のBrdU陽性細胞は、このような状態にあるのではないかと考えられた。Cu-ATSMの高集積部位の細胞群はユニークな性質を持ち、今後有効ながん治療のデザインを行ううえで、また、元祖のものの本質を理解する上で、貴重な情報を与えるものと考える。
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