2007 Fiscal Year Annual Research Report
中性子捕捉療法におけるバイスタンダー効果についての基礎的研究と臨症応用
Project/Area Number |
17591266
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木梨 友子 Kyoto University, 原子炉実験所, 助教 (80252534)
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Keywords | 中性子捕捉療法 / バイスタンダー効果 / 突然変異 / α粒子 / ホウ素化合物 |
Research Abstract |
BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)におけるバイスタンダー効果を調べるための細胞レベルの実験では、BNCTで使用されている硼素化合物(Borocaptate; BSH)を取り込んだ細胞と取り込みのない細胞を混ぜ合わせて中性子を照射することで、α線のバイスタンダー効果による殺細胞効果への影響、さらに突然変異誘発効果への影響を調べることができた。バイスタンダー効果により誘発された突然変異細胞のDNA解析より、その変異形態の特徴は点突然変異有意であることがわかった。また、ラジカル消去剤を使用すると点突然変異型の突然変異誘発が有意に抑制された。生体レベルの実験では、BNCTの中性子照射時に直接α線の照射を受けない正常組織のバイスタンダー効果は担がんマウスにホウ素化合物を投与した時とホウ素化合物を用いない時の脾臓細胞の障害を比較することで証明することができる。X線の照射実験でバイスタンダー効果による脾臓細胞への影響は照射後7か月間と長期間認められたとの報告もある。今年度の研究成果として、放射線の全身照射時におけるバイスタンダー効果による脾臓細胞のアポトーシス誘導やDNA修復に関与する抗酸化酵素の動態などに注目し、その特徴を解析した。文、細胞実験の結果をふまえ、脾臓細胞のHPRT遺伝子座における突然変異誘発についても研究をすすめ、変異形態の特徴を解析してラジカル消去剤の防護効果を生体の効果と比較し検討した。人体影響については、従来の研究でBNCT患者のリンパ球のマイクロヌクレウス形成を調べることで生物学的線量を評価し解析した。BNCTにおいては、全身の生物学的線量は物理学的に計測した線量にほぼ一致した。これらの研究成果より、細胞レベルでは証明されたバイスタンダー効果がマウスの実験や、BNCT治療後の患者の末梢リンパ球の解析では、その特徴が実証できなかった。今後はさらにBNCT患者の中性子照射後のリンパ球のアポトーシス誘導、クロマチンや核生態の変化に焦点を当てて中性子照射の人体影響を多方面から解析する必要がある。
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Research Products
(4 results)