2006 Fiscal Year Annual Research Report
抗癌剤感受性試験を用いた、臨床乳癌における抗癌剤治療効果予測因子の解析
Project/Area Number |
17591325
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
伊藤 研一 信州大学, 医学部附属病院, 講師 (10334905)
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Keywords | 乳癌 / 抗癌剤感受性 |
Research Abstract |
【目的】乳癌においては既に標準的化学療法が確立しつつあり、術後の再発予防目的だけでなく、腫瘍の縮小や消失を期待した術前化学療法も広く行われるようになっている。しかし、その治療効果は未だ充分なものではなく、個々の患者に対するより有効な薬剤の選択が望まれている。一方、乳癌の予後因子あるいは治療効果に関連したバイオマーカーとして様々な因子が報告されているが、それぞれの因子単独では化学療法の治療効果を予測できるまでには至っていない。そこで我々は、乳癌臨床検体を用いてHDRA法による抗癌剤感受性試験と免疫組織染色法によるバイオマーカー発現解析とを組み合わせて、乳癌におけるより個別化した抗癌剤選択の指標を探索することを目的に解析を行った。 【方法】手術時に採取した乳癌組織において、Epirubicin、Paclitaxel、5FU、Cyclophosphamideに対する抗癌剤感受性をHDRA法にて測定し、免疫組織染色法による13種のバイオマーカー〔Ki-67,Topoisomerase IIα,p53,P-glycoprotein, Multidrug resistance protein-1 (MRP1), Breast cancer resistance protein (BCRP), Y-box binding protein-1 (YB-1), c-Myc, Bcl-2,78-kDa glucose-regulated protein (GRP78), Estrogen receptor (ER), Progesteron receptor (PgR), Human epidermal cell growth factor receptor type 2 (Her2)〕の発現との相関を解析した。 【結果および考察】Epirubicinに対する感受性はKi-67陽性、Bcl-2低発現乳癌で、Paclitaxelに対する感受性はKi-67陽性、P-glycoprotein低発現乳癌で、5FUに対する感受性はBcl-2低発現、Her2陽性乳癌で、CPAに対する感受性はc-Myc陰性乳癌で、それぞれ有意な増加が認められた。さらに、バイオマーカーを複数組み合わせた解析では、Epirubicinにおいては、Ki-67とP-gp、Ki-67とp53、Ki-67とBcl-2、またはHer2とBcl-2を組み合わせることで、より明瞭な感受性の層別が可能となり、Ki-67、p53、Bcl-2の3因子の組み合わせで、2群間の感受性の最も良好な層別が得られた。Paclitaxelについては、Ki-67とTopo IIα、またはKi-67とP-gpとの組み合わせで、5FUにおいてはKi-67とBcl-2、またはHer2とBcl-2とを組み合わせることで、感受性のより明瞭な層別が可能であった。今回の解析結果から、それぞれの抗癌剤の感受性と関連がある幾つかのバイオマーカーの発現を評価することで、抗癌剤に対する感受性を推測できる可能性が示唆された。個々の乳癌患者において免疫組織染色で、最適な治療薬選択の指標が得られるようになれば、より簡便にテーラーメイド医療の実現が可能となると期待される。
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